2006/01/18

嵐の前に、静けさはない

 午前中、ノエミがヴァイオリンのお稽古を始めた。
 なんだか2カ所おかしい音があって、どうも気に入らないので「ちょっとピアノの音と比べてごらんよ」とアドバイスしたのだが、娘は「何度も弾いているうちに上手になる」と信じ込んでいて、言われたことは全く無視したまま、同じ曲を引き続けた。母の許しが出るまではやめちゃいけないという、かわいげ(?)もあるらしく、私の顔をちょろっと見ながら、狂った音のまま、40回ぐらいは繰り返して弾いた。

 よく聴いていたら、薬指の位置がずれているせいで、2本の弦の2カ所の薬指部分が狂っているというのが、私にはわかった。だから「薬指の位置が間違ったままでは、あと50回繰り返しても無駄だよ。位置を変えてやってごらんよ」といくら言っても「私の勝手にやる」と言っている。

 けんか腰になって、泣きながら同じ曲を間違ったまま弾き続ける娘。
あんたプロにでもなる気?
「ピアノの音と比べたら?」と繰り返す私。でも返って来る言葉を聞きながら、自分と娘の意思が通じ合っていないことに気づいた。

 怒鳴り合って、泣いて、疲れ切って、そうしてノエミの耳に私の声が届くまでに、ゆうに1時間半以上も経ち、彼女は狂った曲を50回以上弾き続けた。
我が子ながら手強いオンナだ。なんとも強情なやつだ。

 わたしが聞きたかったのは単に「あら?そうかしら?ママンが言ってるならそうかもね」という素直なお返事だけだったのに。。。耳に入れたかったのは「すごいっ、完璧。でもその薬指の位置が2ミリほどずれたらもっと素敵」ただそれだけだったのに。初心者の分際で、しかも私などはヴァイオリンは全く知らないのだから、音程がどうのという問題ではないのだ。

 1時間半を切ったら、ふっとのえみの気迫が静かになって、ピアノのところにやって来た。
「ちょっとこの音出してみて」というので、出してあげたら「あら変ね」と言っている。だーからー、1時間半以上前から言ってるでしょーが!

 母親が「上手にできたからやめてもいいよ」と言わないのは「自分がへたくそだから、ママンが怒っている」と思っているらしい。やめていいよなんて私は言わない。やめるか続けるかは本人の自由なんだから。やめろと言われるまでやらなきゃいけないなんて、誰が言いましたか。

 「嫌々やっても仕方ないよ」というと「いやじゃない」と言う。
やれと言えばやらないくせに。へそまがり。

 母親が「調整をしないまま何度弾いても同じだから、むきになるならやらない方がいい」と言っているのは 「おまえってやつは、いくら練習してもだめだから、何度弾いても仕方ない」と言われていると思ったらしい。

 自分の言いたいことばかりをがなり合って、相手の言っていることが耳に入らないのは、血筋なのかもしれないけれども、ここまで耳がつまっていると心配だ。

 「じゃ、伴奏してね」とにっこり言ってヴァイオリンを構えた娘は、1度目できれいな音を心に刻んで、2度目でつっかえることも変な音もなく弾けた。

 「なんだ、ママンが言ったみたいに、ピアノに合わせたら簡単だね」

ま、1時間半以上掛けて、それっくらいはわかったなら、よしとしよう。
 ううう、疲れる。私って厳しすぎるんだろうか。

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