2012/12/17

光線のように過ぎてく師走

 むずむずしている。うずうずというか。。。
書きたいことがいろいろある。
読みたい本もいっぱいある。翻訳を待ってもらっている文献も約二冊ほど。
せめて家族のためのお料理ぐらいは、ちゃんとしたい。
年末大掃除も、何年ぐらいやってないのだろう?
でも、時間がぜんぜん足りない。

 ミーさんのケーキ屋さんで、お仕事が始まった。でも、合間には中学と高校での授業もある。《日本語クラブ》《マンガクラブ》なので、日本語の授業をするよりは、まあ、準備の時間は少なくてすむ。

 ミーさんのケーキ屋さんでは去年も仕事をしたので、今年は就職前の研修はなく、去年よりも10日遅れでスタートした。アルビの街の大工事のせいで、街の中心街はけっこう静か。お店も去年よりは静か。働いている支店では、どこに何があるとか、いつなにをするとか、同僚達のくせなんかももうわかっているので、気も楽。ヘマも去年よりは少なく、あっという間に一日が過ぎ去る。
 去年は十月に脚を痛めたので、十二月の立ち仕事は辛かったけれども、今年は痛みも少なく、体力的にも元気。それに、なんと言っても、今年に入ってからはレストランの厨房でも働いたので、調理師の肉体労働に比べたら、値札を見ながらレジを打ち、お客さんとおしゃべりして、たまにチョコレートとコーヒーで、大好きな同僚達と過ごす売り子ちゃんの仕事は、楽しいことばかり。《辛い》とか言ったら罰が当たるだろう。

 ミーさんのケーキ屋さんでは普段は丸とか四角のケーキを作っているけれども、クリスマスにはやはりビューシュになる。暖炉の薪みたいな形のケーキだけど、日本とは違って、ロールケーキじゃない。このクリスマスは、子どもたちの《変化を試みる》という態勢のおかげで、JPの実家に行かない。なので、《マノン》という、ミーさんの娘さんの名前がついたケーキを、予約することにした。

ミーさんのお店Michel Belinのクリスマスと新年特別ケーキ クリックすると読みやすいですよ。


 子どもたちだけではなく、JP達兄弟だって毎年毎年の年末年始と、各誕生日、各バカンス、すべての催しをつまらない実家で過ごすという《変化のなさ》にうんざりしていながら、そういうことの言えない(親に優しい?)兄弟なので、「今年のクリスマスは、みのりが仕事で、一人クリスマスに来れないのは気の毒だし」というような言い訳をして、わたしの名前で、わたしの家に、みんなを集結させることになった。

 。。。が、両親達は「クリスマスは実家で過ごすのが決まり、そっちに行きたくない」と反発しており、なので、親族みなさん、わたしのご招待ということでこっちに来るけど、両親だけは来ない。両親は「みのりがみんなを招待したせいで、うちにはだれも来てくれない。一生でいちばん寂しいクリスマスだ」とブーイング。ああ、めんどくっせー

 わたしはクリスマスは寝て過ごしたい。24日も25日も仕事だから、ゆっくりさせていただきたい。お給料は年が明けてからなので、今はお買い物をするお金も時間もない。なのでクリスマスプレゼントも用意できない。わるいね〜。

 ゾエが、屋根裏部屋から、いきなりツリーを出して来た。ノエミが生まれた年に買ったプラスティックのツリーだ。ノエミのお誕生ケーキは、ミッシェル・ブランのソレイヤードだった。バニラのふわふわしたケーキの中に、リンゴとアプリコットのバター味コンポートが入っている。そして表面はこげたプリンのような代物。。。太陽(ソレイユ)のように輝くケーキ。

 自宅のキッチンにいるとラジオをつける。世界の不幸と恐怖、中近東の叫びと、日本からは音では届かない静かな不安で、年末はいつも寂しくなったものだ。そういうものから遠いところ、光輝くショーケースに入った、太陽のようなケーキを売って、お金を持っている人たちから笑顔と感謝の言葉をもらう。汗と涙の三週間は、お正月を過ぎてから報酬となる。

 この年末にわたしの四冊目の本が出るので、お正月には印税をもらえることになっている。お正月を過ぎたら、来年の秋に里帰りをするための飛行機のチケットを買う!

 さあ、がんばって笑顔をふりまこう!



ノエミの16歳のお誕生ケーキ ミッシェル・ブランの《ソレイヤード》

ジャコのお菓子な学校 第一刷 でき

「ジャコのお菓子な学校」がいよいよ出版の運びとなった。
この本は、前回の『ジジのエジプト旅行』に続くラッシェル・オスファテールさんの第二冊目。調理の学校に通ったり、レストランの厨房で働いたりの時期に訳したので、いつも忙しく、出版社の方にご迷惑をおかけしながらも、本人としてはとても楽しいお仕事となった。出版の記念に、五冊は文研出版さんからいただけるので、指宿の母の住所に送っていただいて、その中から一冊は、指宿市の図書館にも持って行ってもらった。

表紙です。風川恭子さんの描いてくださった、かわいいジャコ


クリスマスのバカンスも近づき、去年に続き、今年も今週から、ミーさんのケーキ屋さんで売り子として働いている。じつは、去年研修をして、今年は調理師として働いていたガストロノミーのレストランが、年末年始の忙しい時期に遣ってくれないだろうかと期待していたのだけれども、お呼びが掛からなかった。でも、ミーさんはすぐに返事をくれた。

 アルビの街が世界遺産に選ばれたのに併せて、アルビの街全体も大改造を強いられている。それに併せてミーさんのアルビのお店も、新しくなるので、前から雇ってもらえないかという話をしていた。でも、クリスマス前にオープンの予定だった新しいお店は、工事の遅れで、オープンが来年に延びた。大劇場の目の前にあるこれまでの古いケーキ屋さんは、劇場の工事で埃っぽくてうるさいのだが、クリスマスを前にたくさんの人でにぎわっている。わたしは大好きなミーさんのチョコレートのよい香りの中で一日中楽しく働いている。

 じつは、10月からは高校と中学で『日本語クラブ』なるものを持たされている。日本のマンガブームで、『マンガクラブ』というのもある。高校ではフランス語の時間に生徒達が『俳句』を習ったらしいので、フランス語のポエムを日本語の俳句や短歌風に書き直し、その句のテーマになっている季語や言葉をお習字で書くというアトリエをやった。今週は、中学校のマンガクラブで、日本のクリスマスについて話をし、折り紙でクリスマスツリーを作った。『日本語クラブ』も『マンガクラブ』も週に一時間ずつなので、それが終わったらダッシュでケーキ屋さんに行く。

 時間があれば昼寝をしたいところだが、あまり時間はない。ミーさんのケーキ屋さんに新しい日本人の職人さんが入って来たので、その人とその人の奥様のお世話などもしている。毎日走り回っている。先生じゃなくても師走はやっぱり忙しい。