2011/09/13

新しい学年

 ノエミが高校生になった。カーモーの高校の普通科には希望の科目がないので、アルビの高校に通いたいと夏休み前に希望を出した。アルビの高校だったら、毎朝バスで通うことができる。自家用車だと20分ぐらいだが、バスだと1時間ぐらい掛かる。JPもアルビで働いているのだから、いっしょに自動車で通ったらいいじゃないかと思ったが、JPは、『世界から自動車をなくそう』と運動しているような人なので、これまで通り公共の交通手段を使う方針。ノエミにもバスで通えと言い、娘ににらまれていた。「パパと一緒に電車で通わないか」と言えば、ノエミは黙って部屋に行ってしまった。バスでも電車でも通える。
ノエミは「通学が面倒くさいので、寮に入りたい」と言った。
「通学して欲しくない」父は、あっさりOKした。

 『そういうお年頃』になったノエミは『パパが嫌い。パパとしゃべりたくない。パパは見たくもない』今日この頃なので、寮に入りたかったのだろうし、『ママはうるさい。ママはやかましい。ママは融通が利かない』ので寮に入りたかったのだと思う。友人知人のだれもが「みんなのために寮に入った方がよいと思う」とアドバイスしてくれていた。たしかに親と娘の関係が冷めきっていたので、別居の道はよかったかもしれない。

 アルビの学校に通うのは、カーモーからは二人だけ。でも、小学校時代からの大親友のエステルがいっしょだから、ぜんぜんさびしくない。エステルは、毎朝アルビで働いているお母さんの自動車で通っている。夕方はバスで帰って来る。通学で時間と体力をずいぶん浪費しているらしい。じつは、学校からバス停まではかなりある。

 ノエミは『ヨーロピアン・クラス』というクラスに入っている。エステルも同じクラス。フランス語のほかに、これまでずっと続けて来た英語とスペイン語があり、去年からはじめたラテン語を続け、新しく日本語も。日本語は通信教育。ほかの町には日本語クラスのある高校もあるのだが、ここでは授業がないので、通信で勉強して、成績表に加えてもらえるしくみ。高校を卒業するとき、バカロレア(高校卒業資格試験)の点数に加算される。これまで6年バイオリンもやって来たので、それも卒業試験に加算されるように、今年もレッスンを続けようと思ったのだが、寮に入ることで様々な問題が重なって、バイオリンのレッスンには通えなくなってしまった。高校での新しい生活が落ち着いて来たら、レッスンを再開するかもしれないけど...どうだろう。『ヨーロピアン・クラス』では、英語で歴史の授業とか、スペイン語で地理の授業などもある。卒業するまでにマルチリンガルを目指すということになっている。どうだろう?

 ノエミがどうしてもこの学校に入りたかったのは、この高校では自由選択の科目の中に『芸術』の授業があって、この地方では唯一なのだ。ここでは『絵画、造形、デジタル画像、写真...』などなどのおもしろい『図画工作』みたいな授業があって、学校を歩いていると『いかにも芸術家』みたいな、『芸術は爆発だ』みたいな、服や髪をした若者がうろうろしていて、ノエミの創作本能をかき立てている。ノエミはいつも絵を描いている。どんどん描いている。休む間もなく描き続けている。好きなんだろう。

 「でも,芸術と文学だけじゃ食べていけないに決まってるから、わたしは理系もがんばってべんきょうする!一年やって才能がないとわかったら理系の学校に移る」などと、現実的なのやら、なにやら。。。結構先のことも考えている。らしい。

 週末に初めて帰って来た娘は、急に大人ぶっており、口答えはするし、いうことは聞かんし、ふて〜態度だし。。。母はぐちぐちうるさくしてしまったので、「やっぱり寮の方が楽しい」と言われながら、月曜日、さっさと出て行かれてしまった。

 寮でけっこう厳しくやられているらしいので、帰って来たときぐらいは甘やかせてあげようと思ったのに〜〜〜。なかなか思う通りには行かず。それにしても、ノエミのいない月曜日から金曜日までは、平和でのどか。。。。いや、悪いけど、実にこの上もなく平穏。。。
ゾエだけが寂しそう。なので、今日はお友達を呼んでお泊まりしてもらった。

 わたしは電話を待っている。このことは、また別の機会に。