2011/12/31

年の暮れ

12月は,ミーさんのチョコレート屋さんでアルバイトをした。5日は乃恵海の15歳の誕生日だったけど、12日からのお店での仕事準備のために、ミーさんのお店で研修をすることになって、仕事の帰りにミーさんちのケーキをもらって来るということで話しがついた。


乃恵海のお誕生ケーキ、ミッシェル・ブラン《ショコラチン》

 12月12日から31日まで、よく働いた。去年の同じ時期は、レストランの調理場にいて、冷たい、寒い、汚い、気持ち悪い、痛い、慌ただしい、時によっては怒鳴られる。。。という、厳しい調理人人生を歩んでいたので、今年のこの《チョコレート屋さんの売り子》の仕事は、楽で楽で仕方ないっていうほど楽しかった。
 これまでの短い人生で、《動かなくても優雅に暮らせた》ことはあんまりない。外で仕事もしないでメシを喰って来れたのは、結婚してからの約16年で、それでも、まあ、結婚してからおよそ10ヶ月目ごろには、「収入もないのにでかい口を叩く妻」である自分が恥ずかしいと、常日頃、実は、思ってきた。なので、《自立したい》とまでは言わないけれども、「わたしもいちおう家計に参加してるよ〜ん」と胸を張って生きていけたらどんなに素晴らしいだろうと、じつは、思い続けてきた。

 一番好きなことは、翻訳で、ものを書いたり読んだりすることだ。それはわかっている。日本語教師もけっこう向いていたと思う。長く続いたことを考えたら、まあ、捨てたもんじゃなかった。でも、翻訳も日本語教師も、あんまり収入には繋がらないし、収入のことを言い出したら、いい翻訳も、いい先生もできない。

 「一週間に二回ぐらいバイトできたら〜〜」と甘いことを言ってるうちは、仕事なんか見つかるわけがない。翻訳できなくなったら、悲しいので、一週間に二回以上は、外に出るわけにいかない。一生ボランティアでも、剣道だけは続けたいので、月曜日と木曜日には働きませんって言える職場が基本。主婦なので、母親なので、あれこれ注文着ける。金曜日の朝市とか、水曜日に子どもが休みの日とか、やっぱり働きたくないし〜〜。甘い、甘すぎる

 そこに、ミーさんちのチョコレート屋さんで、いきなり妊娠発覚した店員さんがあり、彼女具合が悪くて出勤したりしなかったり。早退も、あり。クリスマスを前に、店内パニック。クリスマス休暇の間だけ、昼夜問わず働ける人募集。。。と言っても、そうそう宛てがない。ミーさんには前から、「チョコレートの工房でアルバイトをさせてください」とか、「ケーキ屋さんでひとでがたりない時には呼んでください」と言ってアピールしていたので、わたしに声が掛かった。ちょうど子どもたちはクリスマス休暇であるし、剣道はお休みだし、「行けます。行きます」とすぐにお返事して、三回の研修のあと、めでたく雇用契約を結ぶに至った。労働局にちゃんと登録してくれて、ちゃんとした臨時社員だ。


 商売人には絶対になるもんかと思っていた商売人の娘のわたしであるけれども、「頭も悪く顔も悪けりゃ、ニコニコ笑って世を渡れよ」と教えられて大きくなった。(あんまり大きくなってないけど)なので、ニコニコするのは得意。無理なくニコニコできる。ニコニコというよりは、失敗もなにも、ニヘラと笑っていればどうにか解決するもんさと身をもって知っているので、けっこう高い成績でニヘラとごまかせる。帽子屋とか洋服屋さんだったら、「きれいですね。お似合いですね」と嘘もつかねばならないこともあるけれども、わたしは嘘はつけないけど、隠し事はかなり得意だ。「似合ってないよ」と思っているのを、声と顔に出さなければよいのだ。
 売るものが自分の大好きなミーさんのチョコレートで、実際に食べて本当においしいと思っているケーキだし、しかも、去年研修したり、四年以上のおつきあいで知り尽くしている裏の作業を、誰よりもちゃんと説明することのできる自信があるので、ミーさんのチョコレートとケーキだったら、セールスが上手なのだ〜。
 ヘマをやったら、「わたしは中国人の移民で、フランス語がわかりませ〜〜ん」というふりをするし、嫌なことを聞いても、意味が分からなかった振りをする。わたしは店員にむいているのだと、ちょっと思った。三週間ぐらいだったら。。。
 

 店員さんは、女性の職場だ。女性ばっかりの職場っていうのは、危険だ。女の世界は、くだらないうわさ話で溢れている。わたしはそのようなテンポのあるオンナたちのおしゃべりにも、ついていけない振りをしてついていかないので、みんなわたしのことを放っておいてくれる。10月に肉離れをしたので、立ちっぱなしっていうのはきつい。毎晩足が痛かった。 自分が社長じゃないっていうのは、なにかと圧力があって大変。「こんなやり方じゃダメだ」と思っていても、「思っていることを全部口に出しちゃいけない」という法則により、黙って見守る。誰にも命令されずに自分のペースで自分が社長兼社員でやってきた今までの自由を考えると、なんて幸せだったんだろうなあと思う。

 ああ、それにしても、毎日チョコレートとケーキの匂いに囲まれ、残り物をもらい、欲しいものは20パーセント引きで売ってもらえる。なんて幸せな職場。難しいことはあまり考えない。計算は計算機がやってくれる。計算ミスは同僚がごまかしてくれる。


残り物。《ソレイヤード》カスタードクリームの中に、マカロンとナッツ類と、アブリコットとリンゴが入ってる。

 その楽しいアルバイトも、12月31日で終了した。次回は1月14日に「午前中だけちょっと来て」と言われている。本当は1月7日にも来てと言われたけれども、「剣道の講習会でボルドーに行く」と言ったら、「あ、そう」と許してもらえた。高い給料払ってるわけじゃないから、相手にも遠慮があるらしい


 店内展示,お砂糖細工、松ぼっくりも砂糖でびっくり〜。


 クリスマスも、大晦日も、ナルボンヌに行かずにすんだ。16年の夢が叶った。慌ただしくもあったけれども、本当に本当に穏やかなクリスマス休暇だった。

 さあ、明日から二学期。。。