2007/03/01

きずつかない きつつき

 わたしには珍しく、朝っぱらから、日記を書いている。
 夕べは早く寝ると決していたのに、また二時半だった。不眠症かなあ。
それでも朝は7時半には起きる。子どもたちの学校は8時半から。
その後すぐに、近くのジャン・ジョレス公園に、ボボの散歩に出かける。

 今日は、ちょっと遠くまで行った。
久しぶりの晴れ間。公園はぐちょぐちょ。でも、草花が気持ち良さそうに輝いていた。梅の花や桜の花みたいな、ピンクや桃色の花も見える。

 先日、日本語練習用のテキストを探していて、三年生の国語(上)光村図書 から、こんな面白いお話を発見した。ノエミが日本の文部省からいただいている日本の小学校の教科書だ。
 別な所で書いている日記ではすでに紹介したので、二カ所見てくれている人にはインチキ・バレバレだけど、とってもよいお話なので、ダニエルさんちでも紹介する。


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   《きつつきの商売》林原玉枝・作
        1
 きつつきが、お店を開きました。それはもう、きつつきにぴったりのお店です。
 きつつきは、森じゅうの木の中から、えりすぐりの木を見つけてきて、かんばんをこしらえました。
 かんばんにきざんだお店の名前は、こうです。

 おとや

 それだけでは、なんだかわかりにくいので、きつつきは、その後に、こう書きました。
「できたての音、すてきないい音、お聞かせします。四分音ぷ一こにつき、どれでも百リル。」
「へえ。どれでも百リル。どんな音があるのかしら。」
そう言って、真っ先にやって来たのは、茶色い耳をぴんと立てた野うさぎでした。野うさぎは、きつつきのさし出したメニューをじっくりながめて、メニューのいちばんはじっこをゆびさしながら、
「これにするわ。」
と言いました。
ぶなの音です。
「四分音ぷ分、ちょうだい。」
「しょうちしました。ではどうぞこちらへ。」
きつつきは、野うさぎをつれて、ぶなの森にやってきました。
 それから、野うさぎを、大きなぶなの木の下に立たせると、自分は、木のてっぺん近くのみきに止まりました。
「さあ、いきますよ、いいですか。」
 きつつきは、木の上から声をかけました。野うさぎは、きつつきを見上げて、こっくりうなずきました。
「では。」
きつつきは、ぶなの木のみきを、くちばしで力いっぱいたたきました。
コーン。
ぶなの木の音が、ぶなの森にこだましました。
 野うさぎは、きつつきを見上げたまま、だまって聞いていました。きつつきも、うっとり聞いていました。
 四分音ぷ分よりも、うんと長い時間がすぎてゆきました。

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こういうお話に出合った直後だったから、きつつきの音楽に耳をぴんと立てた。ジャン・ジョレス公園にはきつつきがいっぱい居る。たまに、地面で何かをつついている珍しいきつつきもいる。
今日も、きつつきがあちこちで商売をしているのがわかった。一秒間に7-8回も木を打ち鳴らす、忙しいきつつきの方が多い。あんなに急いで、くちばしや脳みそは大丈夫なんだろうか、と心配になった。ほかにも、姿の見えない、きれいな歌声の鳥が、公園で「会話」している。携帯電話の電子音みたいな鳥もいる。あっちでカッコーと言うと、こっちでコッコーと応える。
フラフラの私の頭に、心地よかった。

 いい気持ちで帰って来たら、日本で人間用の「おとや」をやっている友人からメールが来ていた。黒いプラスティックのレコード時代全盛期を、自分たちのオリジナルカセットの交換で盛り上がった、あの時代の友だちだ。そんな彼が今や「おとや」となっているとは、面白い。きつつきみたいな、人の心を癒す、いい商売してくれてるだろうか。

 さて、一日の始まり。あんな私は「おかーさん」になった。お天気のいい日に母がやることと言えば、やっぱり子どもの寝ショーベンの布団干しだろう。そろそろ家もカビ臭くなって来ていたので、お日様大歓迎だ。

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