2006/06/22

逆行

 あさ学校の方に歩いていたら、この頃とっても仲良くしているモーガンが、蒼白な顔をして、息子のアントワンくんを引きずりながら、逆行してこちらに向かっていた。
「どうしたの?なにか事故でも?」こちらも焦る。
「担任の先生がおやすみ。理由は不明。子どもは自宅待機との貼り紙。わたし仕事に遅れそう。子どもたち家で見れる?」

 モーガンが言ってる間に、ノエミは勝手に学校に向かってしまった。
「いってらっしゃーい、ノエミー。ひとりも2人も同じだよ。仕事に行きなさい」
モーガンは行ってしまった。お年寄りが待っているのだから。

 じつはこの朝にはガレージに予約を入れていた。
数ヶ月前から、フロントガラスにヒビが入っていたので、ようやくそれを取り替えてもらうことになった。保険も降りる。仕方ないから、子どもを2人とも連れて行くことにした。

 JPが「駅を過ぎたら一番目を左に折れて、踏切を渡ったらすぐの道を左に」と言ったので、その通りに左に折れたら、一方通行だった。
人の子どもを車に載せて、一方通行を逆行してしまった。あーあ

 ガレージというところには子どもの好きな車がたくさんあって、しかもそこにある自動車は、修理のために窓が外されていたり、おじさんが車の下に寝っ転がっていたり、ボンネットが開いていたりするので、子どもたちは大喜びだった。おまけに通された事務所の時計は、ブリジストンタイヤの宣伝の入った、ブリジストンタイヤ型をした時計で、子どもたちにかなりうけていた。
《ようこそ》の足拭きマットも自動車の形だった。

 窓の外で、いよいよ私のフロントガラスの取り外しが始まったので、窓の内側にイスを持って来て、2人はひとつのイスを取り合いながら、仲良く窓の外で行なわれている修理を眺めた。

 1時間も掛からなかった。21ユーロしか掛からなかった。本当は200ユーロもするそうだ。保険というのは有り難いものだなあ。

 家に帰って、子どもたちはミニカーで遊んでいた。私は鳥の唐揚げと、みそ汁を作り、白いご飯を炊いて、モーガンが帰って来るのを待った。モーガンは、お年寄りの家を廻って、書類書きを手伝ったり、ご飯を食べさせたり、病院に連れて行ってあげたりするヘルパーさんだ。木曜日は8時半から11時半まで、午後は1時半から6時までの予定だった。

 モーガンが帰って来た。お昼ご飯をいっしょに食べようよと言ったら、始めは遠慮していたが、子どもたちがすでに食べはじめていたので、ノエミが一人で学校から戻って来てから、いっしょに食べた。

 モーガンはカンボジアで生まれて、3歳の時にフランスに来た。アジアのものに憧れているけれども、3歳から過ごしているのはフランス式の生活で、顔は私みたいなアジア系なのに、生活様式も、考え方もすっかりフランスの女性と同じだ。カンボジアの料理などもよく知らない。

 前にもみそ汁を食べさせたら、とても喜んでいたので、今日も食べさせようと思って作って待っていたのだ。豆腐とわかめも入れた。3杯おかわりしていた。
アントワンくんはいつも食が細いのに、ふりかけを掛けたご飯と、みそ汁ならいくらでも食べるのでびっくりした。

 モーガンは「ごめんね、ごめんね」と言いながら、子どもを置いて仕事に出て行った。私たちは3人で川の字を作って、昼寝をしようと試みたけれども、子どもたちはすっかり興奮していて、遊びたくて仕方がないようだったので、ちょっと横になって休んで、あとは勝手に遊ばせた。

 2回はけんかして、どうなることやらと思った。一日はあっという間だった。
夕方モーガンが迎えに来たとき、アントワンくんがちょっと熱っぽくて、心配。
興奮しすぎたんだろうか?

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