2007/11/01

ハロウィン



 うちの子どもたちは、テレビをほとんど見ないし、雑誌も買わないし、町を歩くこともないので、ハロウィンが近づいていたことを知らなかった。フランスは、イギリスやアメリカのようなハロウィンのお祭りの「本場」ではない。この単語を知らないお年寄りも多いし、玄関やテラスに飾り付けをしている家はとっても少ない。田舎だから、だろうか??

 11月1日はトゥッサン(万聖節)という祝日で、明日は「万霊節」つまり「死人のためのお祭り」だそうだ。フランスではお墓参りの習慣がある。学生は10月27日から11月8日まで秋休み。このヴァカンス期間中は、一年で一番交通事故の死亡者が多い休みだそうだ。死人に呼ばれるんだろうか?
 ダニエル家では、何もやらない。ダニエル家のお墓はないし、親戚付き合いもないので、楽だ。ハロウィンも、やらない。クリスマスだって大したことをやらないほど。ハロウィンのようなアメリカナイズな商戦?が、JPは大嫌い。

 でも、子どもたちは、ハロウィンの仮装行列が好きだ。

 うちには数年前にわたしが作ったフクロウの仮装用品一式と、お店でおばあちゃんが買ってくれたとおぼしき、魔女用品一式がある。
午後、シネグテ(映画のお金を払って子供用のアニメを見たあと、無料でおやつを振る舞ってもらえる水曜日の行事)に出掛け、映画館を出てから町を歩いていたら、魔女や吸血鬼や、悪魔や怪物にすれ違った。
それを見て、ノエミが「今日はハロウィンだ!仮装しなくちゃ」と叫び、いきなりゾエも目覚めて、自宅に到着そうそう、娘たちはフクロウと魔女に変身した。

 魔女はいきなりカエルやコウモリやキツネを鍋で煮はじめ、呪文を唱える声が家に響き渡る。フクロウは、ホコリや羽を飛ばしながら、あっちチョロチョロ、こっちチョロチョロ飛び跳ねる。吸血鬼がやって来て、我が家のドアベルを鳴らした時のために、玄関にニンニクをぶら下げる母。。。魔女は「ホウキはどこ?」などと言っている。フクロウは「アメを用意したの?」と叫んでいる。そして、吸血鬼や、悪魔や、怪物が、我が家のベルを鳴らすのを待った。来たら、アメの1個でもあげようと思って待っていたのに、誰も来なかった。子どもが少ない区域の、道路沿いの家だからねえ。。。日本人の家ではハロウィンなんて知らないだろう、とでも思ったか?

 化粧を落とし、パジャマに着替え、ベッドに入る9時頃、いきなりドアベルが鳴った。一瞬、なにが起こったのかわからず、わたしたちは身体を硬くして、ベルが鳴ったのは夢じゃなかったのかと、顔を見合わせた。
 「ハロウィンの続きだー!!」
ノエミが気づいて、いきなりパジャマの上から魔女の服をかぶり、階段を駆け下りて行く。
わたしはノエミを追いかけながら、「いくらなんでも子どもがこんな時間に出歩かないでしょ。どっかそこらのチンピラに違いないから、ドアを開けたらだめよ!」と叫んだ。でも、やっぱり、吸血鬼が来てるのかどうか、気になる。

 誰がドアを開けるかでもめているうちに、ドアの向こうから人の気配が消えた。
ドアを開けて、通りに顔を出したが、だれもいなかった。道路はしんとしていた。
 「なんだ、もうお隣に行っちゃったんだね」
ノエミが寂しそうな顔をしている。

 「おばけだったんじゃないの?」
ゾエの言葉を合図に、わたしたちは顔を見合わせた。
「ぎゃああああ〜〜〜〜〜〜」
急いでドアにカギを掛けて、廊下を走り回る。
 
 暗い階段の上で、JPが、冷たくわたしたちを見下ろしていた。
「ぎゃあ〜〜、ドラキュラ〜〜〜」

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