2007/02/14

県道を通って剣道に行く

 今週から来週いっぱい、アルビの街では、各種の春を呼ぶカーニバルの催しが行われる。今週と来週の日曜日には大きな山車が繰り出して、ミス・アルビの発表や、楽隊やクルーンなどが街を練り歩く。うちの子たちも仮装行列に参加するつもりでいる。街の至る所に、県内外から集まった移動遊園地が(メリーゴーランドやゲームセンター、カジノ、アヒル釣りなどなど)にぎやかにきらめいている。今日は久しぶりに剣道に出て行ったので、メリーゴーランドなどのために道路が封鎖されていて、けっこう大変だった。

 ドレイ先生は昇段試験のためにベルギーに行って、親戚の多いリールに寄っているらしく、そこからまだ帰って来ていない。
このごろでは先生が留守の時には、三週間前に三段をもらった、フレデリックが指導者として稽古を運営している。
フレデリックは元アメリカンフットボールの選手だったので、けっこう《熱血》なあんちゃんだ。若い人たちへ指導している姿を見ていると、かなり熱が入っているので、肩を叩いてあげたくなる。

 今日は久しぶりに、中学生の新米くんが来ていた。名前も思い出せない。フレデリックも「名前なんだったかな?」と何度も訊ねていた。有段者たちが日本剣道形の稽古をしている間、私がその《名無しくん》のお相手をした。まずはすり足から。

 フランス人というのは《すり足》と《蹲踞 そんきょ》がとおっても苦手だ。足を地面に擦って歩くのは、日本人の特徴だと思う。日本人が足を引きずって歩くのは、脱げやすい草履を履いていた風習に深い関係があると『たたずまいの美学』という本で読んだ。それから、《そんきょ》という礼の作法は、川べりでうんこ座りみたいにしゃがんで腰を丸め、洗濯物を洗うおばちゃんの格好に似ている。膝を折ってつま先立ちをし、かかとにお尻を載せて、膝は大きく開く礼の形だ。それもまた、かなりつらい体勢だけれども、洗濯おばさんが下駄を履いてしゃがんでる、と思えばなるほどそういう形になるんだなあーとわかる。

 そういううんちくの本を読んでからは、初心者に《すり足》という動きを教える時には、「脱げやすいビーチサンダルを履いてる時みたいに、右足の親指と人差し指(足の指もこう呼ぶのか?)の間に、鼻緒を挟んで前に引っ張る感じよ」と言って教えている。足の裏が相手に見えてはいけない。足は平らで、でも歩行に邪魔にならないように、かかとは紙一重分床から持ち上がっている。頭が上下しないように、お化けがすすーっと動くみたいに動くのだ。能の歩き方にも通じている。

 まあ、こういうことを考えたり教えたりしながら、剣道というのは《茶道》や《華道》や《能》のように、生活の中から生まれた《道》の一つであるんだなあ、という感慨にふける。

 先日ネクトーさんの家で、日本の剣道スポーツ少年団の稽古風景カセットを観た。稽古の終わりに、もと立ち(打たせる側)である先生に向かって、子供たちが一人ずつ、先生がよいというまで打ちかかって行くという、掛かり稽古風景だった。ある時から先生は急に厳しくなり、意地悪っぽいつばぜり合いをしては子供を転ばせ、足さばきが遅くて駆け抜けない子供たちは、竹刀で背中を押されて、遠くまで吹き飛んだ。体当たりをすると、みんなみんな《先生》という分厚い壁に激突して沈没した。。。。全滅だった。みんなみんな転んだ。転んでは立ち上がり、先生に頭を下げてまた体勢を整える。ぶつかってまた転ぶ。。。の繰り返し。。。涙が出て来てしまったが、じつは私だってこんな稽古をさせられたものだ。それでフランス人が剣道は哲学だとか、美しい精神を養うために、とかいうと、「なに言っとる、稽古は拷問です」と反論したくなる。
 ネクトーさんは、「こんなことをフランスでやったら、生徒は来週の稽古から参加しないだろうし、親からは訴えられるぞ」と言った。確かに、小さな子供をここまでしごいてどないする、という気がしないわけではない。私も。
でもネクトーさんは「これぐらい根性ないと、上達しないんだよねえ」とため息をついていた。

「根性」という単語は、この場合状況判断で、私が勝手に日本語で訳してみた。
それにしても、フランス語で《根性》ってなんだろう。。。
確かにフランス人に「根性出せ」とか言っても、「はあ?」って感じだ。
 この前両足にマメを2個作って血を流しながら稽古を続けていたら、「信じられない。何が楽しくて。。。」と言われてしまった。豆は楽しくない。確かに。でも、マメなんかは稽古中は気にならない。痛くても動ける。マメのせいで剣道できないとか言うぐらいなら、剣道やるのは諦めた方がいい。手にはマメができない体質でラッキーだ。

 今日はフレデリックのおかげで、アメリカンフットボール選手のように走り、叫んだ。なんだかとっても若返った気分だ。いつも父と同い年のお年寄りに、6段の技とか見せてもらい、昔話を聞き、あまり汗もかかずに帰ってくる。しかも、稽古に一時間ぐらい送れることもあるので、見取り稽古ばっかりやっている。このままではもっと老ける。

 2月25日の日曜日に、ナルボンヌという所で、朝9時から夕方5時まで試合稽古ノンストップという行事が催される。8時間の試合稽古は、けっこう疲れるだろうなあ。。。行きたいけど。。。どうしようかなあ。。。と悩んでいる。冬休みの最後の日曜日だから、まずは家族水入らず、だろうねえ。。。うーん。もっと剣道行きたいなあ。。。