2008/11/18

ありがた迷惑

 空港でホッとして、まず、行くところと言えば、トイレ。18年ぐらい前にひさしぶりに帰った日本で、最初に入った空港のトイレで、水の流し方がわからず、いきなり焦った。そのころから都会のトイレはオートマチック化されていて、蛇口のない水道を持つ日本のトイレは、とっても《進んで》見えた。駅では《カチカチカチ、、、》と永遠に続くかのような、切符を切るはさみの音もまだ響き渡っているころだった。

 4年前に家族と帰った時、お尻を洗ってくれるトイレが普及していて、それは4年の間、ノエミの「日本って言えば。。。」ではじまる語り草になった。ゾエは4年前の記憶がほとんどなく、ノエミが「日本のトイレは」とあんなに熱く語って聞かせていたのに、具体的にどんなトイレなのかよくわかっていなかった、らしい。

 ゾエにとって、今回の旅行以来、トイレというところが恐ろしい場所となった。
まず、飛行機のトイレ。ものすごい勢いで、激しい音を立てて、吸い込まれるXXX。。。恐怖心のせいか、飛行機酔いをしてしまい、トイレで吐きたいのに、トイレには行きたくない。
あの狭いトイレに、いちいち「いっしょに入って〜、中で待ってて〜」と言われる羽目に。

 そして、やっと地に足がついた空港で、いきなりお尻を洗われてしまったゾエちゃん。
あれは、すごく怖かったらしい。
トイレのドアをそろそろ〜っと開ける。薄めに開けてまず確認するのは《洋式》か《和式》か。
和式だと、となりのドアへと走り去る、走り去る、走り去る。そして、やがて、奥のほうにただひとつの《洋式》にたどり着けば、ラッキー。ただ、《洋式》を見つけても、入るのを戸惑っている。
「その辺にあるボタンを触りさえしなければ、お尻、洗われないから」
と言ってあげると、やっと勇気を出す。
「ドアの外にいてよ」
と言って入って行く。
「音姫」の使い方まで知らないので、ゾエの用を足す音が聞こえる。それと同時に「ハアああ〜〜」と気持ちのよい声まで。。。

 ある日、病院の最新式トイレに入ったゾエは、なかなか出て来ない。様子を見に行った母が、大笑いをしている。その横には、泣きじゃくるゾエが。。。

 「ひゃ〜〜ン。頼みもしないのに、おしり洗われたあああああ〜〜〜」
「パンツも濡れちゃったんだけど、それ言ったらプライド傷つけるから、見てないフリして。。。」と母が耳打ちする。

 編入することになった丹波小学校のトイレは、昔は《ドッポン》で、青い手と赤い手にお尻を拭かれるといううわさまであったので、どうしよう〜〜と思っていたら、《和式》ではあったが、水洗に変わっていた。ほっ。たすかった〜〜。

 ゾエは、フランスに戻って来てからも、トイレに入るのが怖くなった。
トゥールーズの空港で、「和式かな?」と言ってドアを開けているし、「洋式」だとわかっても「お尻洗わないかな?」とつぶやいている。「フランスにはそんなものないんだから」といくら言っても、このごろはトイレ恐怖症。困ったものだ。

 日本を最近旅行したフランス人はみんな、お尻を洗ってくれるトイレや、便座のあったかいトイレに感嘆する。そしてなによりも感動的なのは、トイレットペーパーの使い口(?切れ目?)が、いつも三角に折ってあって、次に入る人への心遣いが見え隠れすることだ。いや、あれは実に感動的だ。
 ただ《音姫》だけは理解できないらしい。

ま、そうだろう。

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