2008/01/10

雀の手帖




 ムッシュ・アサクマによる、《鳥玉》という作品が素晴らしく、どこに行ったら買えるのか問い合わせをしたら、すでに売り切れだった。
 東京の《パペットハウス》という人形屋さんのサイトで、《鳥玉》の写真を見てください。この中の《雀》がお気に入りです。
http://www.puppet-house.co.jp/

 その日《雀》が手に入らなかったことにいじけながら本棚をひっくり返していたら、『雀の手帖』が出て来た。幸田文さんが「ちゅん、ちゅん、ぺちゃくちゃと自分勝手なおしゃべりを毎日書き溜めた手帖」とのこと。
 1月1日にJPの実家から戻ってからというもの、年賀メールなどなどに返信するのも超忙しかったし、来週日本から受け入れるチョコレート屋さんの取材の件でもいろいろ忙しく、この一週間ずうっと4時とか5時に寝るのが習慣になってしまい、昼間はゾンビ状態。それで、いよいよ眠らなくてはもうどうしようもないと、身体と頭が危険信号を発しはじめた。すべてを忘れて布団の中に入ることにした。されども布団の中には、つい本を持って行く。

 『雀の手帖』が面白く、布団に入ったはいいが夜更かしをしてしまった。
これをかいた幸田文さんは1904年生まれで、1990年に亡くなっている。文さんは幸田露伴の娘さんだ。青木玉さん(孫)の読み物も好き。
 『雀の手帖』には100の短編が載っている。一話がだいたい2ページで、あっという間に読んでしまう。
 日常のさまざまなことがテーマになっていて、その観察力と、表現の絶妙さに、驚いてしまう。そして、昭和初期に生きた、東京の離婚経験まである飛んでる女が使う、江戸っ子言葉と、片仮名を使わないオノマトペが、面白くって仕方ない。
 
 隅田川の洪水で、『たたっこわそうとしている』感じで流れる川が、いろいろなものを運びさる。日常の身近なもの、例えば家具などが、濁ってはやい川に揉まれ、呑まれる様子を見て、「平和と団らんを流して行きやがった!」と悪態をつく。
「家具よ、といういとしさがたまらない」
「無力に翻弄されているのに、なお形を保って流れて行くのである。家具が川の中を行けば、異変が正常をぶっ壊した、と目に焼きつくのである。」
 そこで近所の老仕事師がいう。
「軽くて、縦と横が組み合わさっているものは、助かるかもしれないんだよ。樽はなかなか壊れないものなんだ。いつの洪水にもー」
 そして幸田文さんは、こう締めくくる。
 「川は美しくばかりない。恐ろしい川を見たおかげで、わたしは家具を違った角度から見る。」 

 隅田川の洪水は、「日常」とはかけ離れているのかもしれないが、「川を見て家具を思う」辺りが、「書いたものを読んでもらいたいと思っている人の観察眼だなあ〜」と感心する。縦と横が組み合わさっているものが、丈夫であることに関しては、おそらく、樽のことだけを言っているのではない、と思わせてくれる。
 基本がしっかりしていると上手になれるはずの剣道のことや、便利に片付いていると平和なわが家のことや、組み合わさって丈夫な人間関係のことにまで、思いを馳せる。

 パソコンの前で夜更かしする時間を、もっと読書に費やさねば〜〜と反省した。作文コンクールも待っている。

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