2009/03/09

ちりっ の 瞬間 3月8日

前日ナルボンヌのJPの両親宅に着いた。
弟夫婦がお正月から実家のすぐそばに引っ越してきているので、みんなでJPの誕生会をすることになっていた。
弟たちが、JPに何をあげたらいいだろうかと訊くが、わたしにはJPの欲しがってるものなどわからない。

 JPはなにも欲しがらないし、なんにでも喜ぶ。ひとつのものを長く大事にする方で、気に入ったものはいつまでも使う。お土産やプレゼントをもらえなくてもぜんぜん気にしないし、人に何かあげたい時には、時を構わずあげる方なので、自分もそうされると喜ぶ。自分で買う時には、時間とお金を掛けて厳選したものだけしか買おうとしないのに、人からちゃちい物をもらっても、バカにしたりしない。本人の外見と彼の趣味のギャップが人を驚かせるタイプで、いつも難しい顔をしているために「なにをあげても喜ばないかも?」と思われるタイプ。だから、人はいつも《無難な線》を選ぶ。本かバンドデシネをあげたら、いつものように黙って姿を消し、静かにそして幸せそうに、座って黙々とページをめくる。
《無難な線》案をクリスマスで使ってしまったばかりなので、わたしたちは何かあっと驚かすような物にしたいね、ということで、JPのお母さんが集めている、さまざまなお店のカタログを眺めることにした。

 弟の奥さんのソフィーと、巨大スーパー「カルフール」のカタログを見ていたら、レコードプレーヤーが載っていた。わたしはそれを今度のクリスマスにプレゼントしたいと思っていること、とっても高価なので、今からお金を貯めようと思っていること、などをしゃべった。そこへ、弟があらわれ、
「なに?JP、それ、ほしいがってるの?レコード持ってる?」
と首を突っ込んできた。
 うちには、八十年代にJPが集めていたレコードがいろいろあって、ずっとそれらを聞きたいと思っていたのだけど、プレーヤーが壊れているというので、いつかプレーヤーを買ってやるぞ!と、数年前から思っていた。最近また黒いレコードのブームで、割合安く(私には高価だけど)プレーヤーが手に入るようになっているようだった。

「これまで兄さんにはまともな贈り物をしたことがなかったし、誕生日を一緒に祝えるのも数年ぶりだから、これを買ってあげよう」
と、弟が元気よく宣言した。
いやあーびっくりした。この弟からこんなセリフが出ようとは。

 わたしはすでに音楽を聴くためのiPodを買ってあった。こちらもずっと買ってあげたい、あげたいと思っていたので。
弟は宣言通り、土曜日のうちにプレーヤーを求めて数軒の店を走り回り、ついに買ってきた。箱を覆える大きな包装紙がなかったので、箱の二面に白い紙を貼って、子供たちに絵を描かせた。
ゾエはハートをいっぱい描いた。

 先ほど両親の家から戻り、JPは真っ先にプレーヤーを居間にセットした。JPが一番に掛けたのはThe Police の De Do Do Do De Da Da Da だった。わたしたちは一緒に歌った。
黒くて真ん中に大きな穴があいている、本物のレコードだ。子供たちがびっくりしている。
JPはプレーヤーの調節を終えたら、今度は書斎にこもってiPodをいじり始めたので、わたしはそっと居間に戻り、ずっとずっと聴きたいと思っていた、Simon and GarfunkelのThe Concert in Central Park を掛けた。
2枚組のうちの1枚目A面に入っていたSCARBOROUGH FAIRが終わった時に、急に静かになったので、何が起こったのかと思ったら、1面に5曲しか入っていないのだった。そんなこと、すっかり忘れてた。

 そのレコードはちょっと波打っている。レコードというのは大きな黒い物体で、とっても傷つきやすそうだ。CDのように手に乗らないから、落としたらどうしようと思って、こわごわ動いてしまう。針の先にホコリが集まって来るのや、波打っているために、一周するごとに、ほぼ同じ場所で大きく上下する針を追いかけながら、音を出す瞬間に機械の中でいったいなにが起こっているのか意味不明のCDよりも、はるかにおもしろい物体だと思った。レコードが回る姿を見ているだけでも楽しい。

 針が真ん中にたどり着くたびに、立ち上がり、プレーヤーの所まで行って、針を持ち上げる。レコードはひっくり返したが、さて針をちゃんと正しい場所に置けるのか、とっても不安だった。針を置く瞬間に「ちりっ」となるのが、懐かしくて涙が出そう。
JPのレコードを次から次に出して、聴こうと目論んでいる。
わたしたちの八十年代は、あんなに遠く離れていたのに、けっこう似たようなものだったんだなあ、と思う。
JPは44歳になった。(43だと思ってたのに、違ってた)

 来月、わたしは42歳になる。(32だと思ってたのに、違ってる)今まで、誕生日のプレゼントにリクエストを出したことはないけれども、みんなが「変な物あげるよりいいし、考えなくて済むから」というので、今年は、絶対にリクエストを出そう。
ジャズやクラシックのレコードなんか、たのめるだろうか?

2 commentaires:

marc a dit…

こんにちは
前から気になっていたのですが、JPはJean-Pierre、それともJean-Paul、あるいはJean-Philippe、はたまたどれでもないのか・・・
いずれにせよ、お誕生日おめでとうございます :)

marc

nozomi a dit…

Marc さん、こんにちは。コメントをありがとうございました。うちのJPは、Jean-Philippe です。
長くて面倒臭いので、書く時だけです。
ふだんはminouと呼んでます。
お誕生日は、ラザニアとチョコレートケーキで、食べ過ぎました。。。