2006/10/06

ポリーヌのおばあさん

 去年、商工会議所の日本語クラスで勉強し、高校卒業試験の日本語で20点満点の17.5点を取ったポリーヌさんは、8月15日から福岡女学院という高校に留学している。

あ、今気づいたけど、《女学院》だから女だけか。大丈夫かねえ。
あこがれの制服も着て居るらしいので、ぜひ写真を見てみたいものだ。

 たまにメールが来る。便利な世の中になった。

 ポリーヌさんのホスト・ファミリーはご両親共働き(どちらも教授と教師)一人っ子の中学生の居る家庭だ。おばあさんという人は茶の湯の先生でいらっしゃる。とてもよい家庭だという話。

 ポリーヌさんは学校のクラブ活動で、前にわたしに宣言した通り、剣道クラブに入った。
とても難しくて、でもとっても面白いですううううう、とメールにあった。

 毎年夏には、福岡で『玉龍旗』という剣道の高校全国大会がある。日本ではサッカーやベースボールは毎日やってるのに、剣道をテレビで見ることなんて滅多にない。でも、玉龍旗はテレビでやる。ポリーヌさんは来年の夏に本場の福岡で、本物を見れるんだ。ああ、うらやましい。

 フランスの新学期は9月だったので、ポリーヌさんは2学期から留学となった。このまま高校2年生のクラスで春まで勉強する。そのあとは、3年生に進級。その時にホストファミリーも交代して、来年度には子どもが5人居る家庭で暮らすことになる。お父さんがお医者さんで、お母さんは専業主婦だそうだ。へえ。おもしろそう。
 ポリーヌさんは小さい時にお母さんを亡くしているので、専業主婦で、いつも子どもといっしょに過ごすお母さんと触れ合うことができるのを、それはそれは楽しみにしていた。お母さんの居ないポリーヌさんが、日本に2人のお母さんを持てるなんて、よかった。よかった。

 ポリーヌさんにお母さんが居ないことは知っていた。でも、よくおばあさんと過ごしていると、ことあるごとに耳にしていた。ポリーヌさんと2人でよく旅行などしているおばあさんだ。ポリーヌさんが日本に行ってしまって、どんなに淋しくしているだろうと思って、ポリーヌさんから日本の近況を知らせるメールが届いた時に、ポリーヌさんのおばあさんあてに、わたしからメールを書いた。春休みにポリーヌさんがおばあさんのパソコンからメールをよこしたことがあったので、アドレスが残っていたのだ。

 本日、ポリーヌさんのおばあさんから電話をいただいた。世間話をいっぱいした。ポリーヌさんが母親を亡くしたのは《小さいころ》ではなくて11歳だったと知った。まだ若いのに癌だったそうだ。ほんの数年前のことだったなんて。。。ポリーヌさんの明るさからは想像もできなかったし、わたしはそういう家庭の事情など訊きもしなかった。おばあさんは
 「あの子は母親のことを語りたがらないの。あなたがとやかく訊かないから、だから、あなたのことも好きだったんでしょう」と言っていた。
 たくさんの後悔とともに去っていった人のことは、語れないものなんだ。語りたくなった時に聴いてくれる人がいたら、いいんだ。

 おばあさんは、ポリーヌさんが日本に行ったことをとても喜んでいた。昔からの夢だったし、日本でいろんな体験をするのはいいことだと言っていた。寂しがっては居ないようなので、ずいぶん安心した。

 「でも、退屈してるから、どうぞ遊びに来てよ」と言っていただけたので、子連れで遊びに行くつもり。わたしにも、フランスで新しいお母さんができた。うれしい。

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