2009/08/31

夏休み 8月12日〜16日

 スタンとサンドリンに会うのは、一年ぶりだ。
去年は、ダーバス一家がカーモーに来てくれたので、今年はダニエル一家が、ロッシュフォーにお邪魔することになった。
 ロッシュフォーというのは、大西洋岸の港町で、フランス海軍の船を造っていた歴史のあるところだ。
《コードリー・ロワイヤル》という、船の綱を編むとても細長い特殊な建物がある。最近まで、ゾディヤックというゴムのボートも造っていたのだが、不景気でその工場は閉鎖され、しかも、海軍の軍艦もほかの場所で造られることになったので、巨大ながらも寂れた建物が町の中にいっぱいある。



 ここには何度も来たことがあるけれども、スタンたちが5年前に買った家にはまだ来たことがなかった。でも、その家は、前に住んでいた家の目の前だったので、迷わずに行くことができた。

 ダーバス一家には、12歳と14歳の少年がいる。去年会った時には5年ぐらいぶりだったので、少年たちが長髪をかき上げる姿に、ちょっとドキドキしたものだ。2人ともボーイソプラノで、お母さんの後を追いかけまわしていて、とっても可愛かった。わたしがどんな食べ物を出してもよく食べてくれたし、うちの少女たちともよく遊んだ。
 久しぶりに会う大きく成長した少年たちが、いったいどんなものを好むのかわからなかったので、ノエミの友達のお母さんたちに、少年向けのビデオやゲームを借り、少年の好む食品のリストをもらい、「少年たちが退屈したら、遊びにやってもいいかしら」と予約しておいたほど緊張したものだったが、今年は免疫ができているとおもっていたので、「あの子たちなら大丈夫」と思って、あまり緊張せずにお邪魔した。

 ところがどっこい。
 少年たちは、声変わりしかけていて、上の子などは3オクターブを使いこなしていた。長髪じゃないけれども、半分だけ顔が隠れている変なヘアスタイルで、左下方向から右上方向にかけて、一日中頭をふり上げている。パソコンの前でイヤホンをつけて、インターネットでエッチな青春ドラマを平気で見る。たまに、カノジョとチャットでおしゃべり。外を歩くときには、常に左手で携帯をいじりまわしながら、ついでに、派手なハードロックまでガンガン鳴らす。いっしょにあるきたくな〜〜い。
 母親のことはお手伝いさんかなんかのように命令するし、父親のことは透明人間のように無視するし、しかも腹立ったのは、テーブルに出すもののすべてが嫌い!なので、わたしたちは毎日トマトかパスタを食べなければならないのだった。

 サンドリンは中学のフランス語の先生なので、一年中朝から晩まで「こんなやつら」とお付き合いしており、さんざん疲れきっている。それなのに、夏休みにはまた、「こんなやつら」が家でウロウロしているので、もう、本当に疲れ果てている。
 なので、毎日トマトでも、毎日パスタでも、わたしたちはせっせと台所に協力して、できるだけもう子供たちは放っておこうよということにした。

 最初の日、少年少女4人は、居間の4隅に散らばって、それぞれの持っているニンテンドーのゲームを、それぞれ勝手にやっていた。
 二日目には、ゲームを使って、電波で友達のゲーム機に割り込み、対戦したりメールを送ったりできるということに気づいたので、それをやっていたらしい。「いっしょにあそんだ」のだそうだ。
 三日目になり、車で遠出してピクニックをしたのだが、その時にもこっちの車の中から、あっちの車の中へ、メール交換をやっている。な〜んか腹立ってきたので、ゲーム機を取り上げた。
 結局、動物園は、ゲーム機なしでも十分楽しめたので、平和な1日となった。動物園から帰ってきた夜には、ゲーム機使用禁止だったために、昔ながらの双六みたいなゲームやじんせいゲーム、チェスやトランプなどをやっていた。だから、居間から、子供たちの叫び声や笑い声が聞こえてきて、サンドリンが、「ああ、なんだか、子どものいる家庭って感じ」とつぶやいていた。

 海のそばだと思っていたが、この辺の海は地中海とは違って、引き潮の時には海がなくなってしまう。波は遠くはるかかなたに見えるのだが、引き潮で浮かび上がった海岸は、どろどろとした沼地になっていて、勇敢にもそこに入り込むと1メートルも歩かないうちに、膝まで泥に埋まってしまう。なので、わたしたちはインターネットで探して、≪アンティル諸島≫という面白い名前の付いたマリンスポーツ施設に行くことにした。丸1日遊べるチケットを買って、丸1日遊んだ。波の出るプールや、アンティル諸島みたいな白い砂浜。プラスティックのバナナと、ココナツの木の下で昼寝をし、泡の出るプールで肩のコリをほぐし、ゾエなどは、滑り台のプールで、おしりが擦り切れるまで飛びこみ続けた。

 最後の日までには、子どもたちもすっかり(人らしく)なかよくなり、よく遊ぶようになっていたのだが、帰る日はあっという間に来てしまった。ゾエは3オクターブのお兄ちゃんが大好きになってしまい、帰りたくないといって泣いた。

 スタンとサンドリンとは、もう20年近くのお付き合いだ。JPのたった一人のむかしからの友達なので、やっぱり私たちもお別れがつらい。またすぐに会えますように。

 
           

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