2007/09/19

9月4日 A Tokyo

9時45分ーチェックアウト 本日も大変早起きをした。夜中に翻訳をやっていたので、ほとんど寝ていない。
10時10分ー名古屋発の「のぞみ124号」にて、一路東京へ。
途中、車掌さんに「富士山はいつごろですか」と尋ねると細かい数字を教えてくれた(11時8分頃とか、そんな具合にかなり正確)。でも曇っているから見えないかもね、と言われた。

 わたしは富士山を見たことがない。もう何度も何度もその麓を新幹線で通り抜け、飛行機で上空を飛んでいるのに、いつもいつも雨か曇りだ。ミーさんはカメラを構えて待っている。
 富士山はいきなり現れた。雲がかかって見えなかったのに、ちょうど一番近くを通る時に、雲がさっと晴れて、上の方まで見えた。なんだかとっても大きな壁が、どこまでもどこまでも続いているという感じ。麓には建物が多いんだなあ。富士さんのイメージがちょっと崩れた。「ああ、近くで見るんじゃなかったよ」とひとりごちた。遠くから見てこそ、美しかったのかあ〜。

11時53分には東京駅に到着。
ホテルにチェックインして、お昼はイタリアンだった。
 フランスでもイタリアンはよく食べる。スパゲティーと言えば、赤と白のテーブルクロスを敷いたぐらつくテラスのテーブルで、隣の人に肘が当たらないように小さくなって食べるものという印象だ。そうして、汚い前掛け(エプロンともいう)をした、イタリア人みたいにおしゃべりなお兄ちゃんが、お皿を掲げて身体をくねらせながら、テーブルの隙間をすり抜けて歩き回る、というようなイメージ。
 こーんな窓もない「高級レストラン」風のイタリアンははじめてだった。しかも、スパゲティーを食べるのに、スプーンがないので、とっても食べにくかった。うちではスパゲティーはスプーンとフォークで食べるので。ミーさんにそのことを言ったら、「イタリアから遠いんだから、そんなこと言っちゃいけない」と言われた。わたしたちはたまに、二人でこそこそ、日本人の陰口を叩いた。

 ミーさんはタクシーに乗るたびに、カーナビ完備で、バックもらくちんな車内にて「日本ではだれでもタクシー運転手になれるな」とか「白手袋に帽子とは、行儀がいいな」とか、いちいちコメントをつけていた。
 あるとき、道路脇に止まっていた休憩中のタクシーに「乗せてください」と頼んだ。運転手さんはタバコを吸っている最中だったのだが、嫌な顔をせずに姿勢を正して、いきなり走り出した。「あれ?どこ行くの?」と見ていたら、200メートル先の自動販売機の所まで、タバコの吸い殻を捨てに行った。その辺の植木の足元や歩道に、投げ捨てるなんてことはしないらしい。ミーさんはもちろん感激して、またも大爆笑だった。(じつはわたしも驚いた)

 ランチのあと、午後は東京都内を走り回り、菓子店(フランス人の有名ケーキ屋さんとかMeijiのチョコレートバーなどなどなど)を視察、挨拶して回った。わたしとミーさんは「ここはどこ?わたしは誰?」と言いながら(本当に)、案内してくれる関係者、カバンを持って前を小走りにしている人(一体だれ?)、近道だとか言って地下駐車場をつきって行く別な人、なにがなんだかわからないまま、小走りで追いかけた。

 貿易会社側の人たちも、場所と時間の関係で菓子小売店視察組と、百貨店挨拶組に別れて、時差攻撃でわたしたちをさらいに来る。歩行時速約8キロだよと言われた。駅でわたしたちは引き渡されたり、引き取られたりした。タクシーで行くと、行った先で人が待っている。

 夜は銀座の某フランス料理店でお食事。「このような接待の会食では、通訳は食べる暇がないと思いますヨ。」と言われていたのに、いやあ〜、申し訳ないけど、わたしゃ食べましたぜ。
 このレストランは40席しかないのに、ボーイさんが45人もいて、至れり尽くせり。マリオットホテルのボーイさんのように、小さなことまでよく見ていて、立ち上がろうとすると、さっと椅子が引かれ、ナプキンを落とすと拾われ、代わりに新しいものがもう届けられている。プロだねえ。
 きっとわたしのフォークの使い方や、グラスの握り方まで見られているに違いない。おお恥。

 お仕事の会食とはいえ、百貨店の方々はワインや、フランス食文化に詳しく、ミーさんと楽しい会話がはずんだ。ここのフランス人シェフとミーさんはお知り合いだったので、シェフもテーブルにやって来ておしゃべりが弾んだ。シェフのブルーノ・メナールさんは、お酢の開発もしていて、とても興味深いお話が聴けた。料理は素晴らしかった。サービス係の中にはフランス語がペラペラな人や、もちろんフランス人もいて、その人たちもテーブルにやって来る。一人はカーモーのご近所出身だった。

 いちおう予定表には「22時ホテルに帰る」と記録されていたが、もっと遅くなっていたと思う。
ホテルのテレビで、台風が接近しているというニュースをやっていた。わたしの部屋は二方を壁に囲まれていて、風が吹いているのか、空はどうなのか、よくわからなかった。窓から見える視界に、風に吹かれそうな木々はない。

 わたしの持ち物を心配した東京都内の友だちが、シックなワンピースと、手提げのカゴなどをホテルあてに送ってくれていた。みんなわたしがいつも汚い格好をしているのをよく知っているので、ジーンズで仕事してるんじゃないかと心配してくれているのだ。鹿児島で買ったヒールが少々高くなっている靴を、もうずっと履いている。骨折と捻挫で痛めたことのある左足首は、すっかり腫れている。でも、夜はどんなに遅くても、ゆっくりオフロに入ってマッサージをしている。
 毎日夜が遅くて、頭はぼーっとしている。疲れすぎて寝付きが悪い。朝は疲れきっているのに、遅刻が怖いので、がばっと起き上がる。目覚ましが鳴る何時間も前に目が覚めて、「まだか。まだか」と寝たり起きたりしながら、時間が来るのを待つこともある。そして約束の時間よりもずいぶん前に起き上がって、部屋の中を動き回っている。

 明日は一日中時速9キロで歩きますよ、と言われているので、歩きやすい靴を履こうかなあ。
 

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