2006/09/15

滑る

 午前中、婦人科の検診。
行っている婦人科は女医さん。とてもよい人で、よく話を聞いてくれる。

 数週間前に「いやらしいジェラシー」のタイトルで書いた日記に、JPの同僚のシルビーのことを書いた。金髪で痩せてて、できるキャリアウーマンだ。彼女が、夏休みの最後の金曜日に、乳がんが見つかって、緊急入院のあと、直ちに摘出手術を行なった。現在化学薬品を使った治療を行なっているそうだ。それはとっても厳しい治療で、髪の毛が束で落ちたり、食べてないのに吐いたりする、とても体力を消耗する治療だそうだ。離婚して、引っ越したばかりで、子どもたちは新学期から新しい学校に通う。一体どうしているんだろうと思う。

 シルビーのことを考えたら、わたしも胸が痛んで来て、いきなり癌のことが不安になったので、婦人科での検診でも訊いてみた。40歳からは、乳がんの検診を勧めていると言って、レントゲン技師への紹介状を書いてくれた。あなたは大丈夫だと思うので、年が明けてからでもいいと思うけどと言ってくれた。

 帰りがけに、スーパーによろうと思って、高速を途中で降りた。市道に繋がるカーブをおりている途中に、一瞬《目玉》を忘れて来たような気分になった。
《目玉》はその場所に止まって、脳みそだけがぐらっと左に動いた気がした。
車が滑っているんだということはわかった。
車がくるくる回った。後ろから来る緑色の車がよく見え、「気をつけてー」と声にならない声を掛けていた。運転手が口を半開きにして急ブレーキを掛けたが、スリップはせずに、わずかなところで止まった。中央分離帯にも乗り上げなかった。
 
 後ろからあと5台ぐらい続いているのも、よく見えた。カーブだから、誰かがどこかに追突するんじゃないかと思って、滑りながら遠くまで、後ろの方を見ていた。(ような気がする)
追突も対向車への被害もなく、車が止まった。
 急いで発進させようと思ったが、方向感覚がなくなっていた。ハンドブレーキを掛けていないので、車がずるずると滑っていく。誰もクラクションを鳴らさない。後ろの人たちが、自分のことを心配して見守っているのがわかった。両手で顔をぬぐって、大きく息をして、そのまま進んだ。

 スーパーの駐車場で休んで、落ちついて来たのでスーパーを歩き、夕食用の魚を2尾手にとったら、ぐずぐずしないで帰りたくなった。

 駐車場で車をバックさせていたら、窓を叩く女性がいた。
「さっきの車、あなただったでしょ?」と言われた。はじめ、なんのことかわからずにぼっとしていたら、指でぐるぐると円を描くので、カーブで滑って車をぐるぐる滑らせた、自分のことだと気づいた。
 その人はすぐ後ろではなくて、数台先の車に乗っていたらしい。古いプジョーに乗っていたのがアジア人だったから、わたしのことがわかったのだろう。
 「危ないところだったねー。大丈夫?恐かったでしょう?」
というので、当時の状況がよみがえリ、頭がくらくらして来た。
「あら、なにやってんの?と思っていたら、その瞬間ぐるぐるってまわったわよ。道路に油でもあったのかな?スピードも出してなかったのにね」と言われた。

 いや、それにしても、事故に至らずよかった。追突事故でわたしの後ろにいた人たちが怪我でもしていたら、どうしようもないところだった。それにしてもいま考えると、気分が悪くなってハンドルを切り損なったのか、滑ったから方向感覚だか、平衡感覚だかがなくなって頭がふらふらしたのか、よくわからない。とにかく、事故というのはあっという間に起こるのだ。

 そのカーブには、黒い人型のパネルが立っている。その場所で、少なくとも一人の人が亡くなっているという意味だ。実はいつもこのパネルがカーブから見えて来るその瞬間に「どきっ」としてしまうのだ。気をつけていたはずなのに。。。これからはもっと自覚しよう。

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