2006/05/24

助かった

2006年05月24日
助かった
   朝から晩まで、同じことを少なくとも5回ずつ繰り返し言わなければ、ノエミは動かない。

このチャンスに、日本語の同じ単語を5回ずつ繰り返せば、日本語の単語を一日に何10個と覚えるに違いない。

どうして今までそれに気づかなかったのだろう。

 たとえば

 起きてー着替えてーフトン畳んで(ノエミは床にふとんを敷いて寝ている)ー下に降りてー朝ご飯食べてー片付けてー洗面所に行ってー歯を磨いてー髪をどうにかしてー上着を着てーティッシュ持ったの?ー気をつけて。。。

 その間に

 本を読むな(朝起きたら、まず本を開くので)ーふとんをきれいに畳めーパジャマを片付けろーさっさと動けー階段で飛び跳ねるなースリッパを履けー残さず食べろーこぼすなー散らすなー喋るなー時間だよー時間がないよー歯をもっとよく磨けー泡を飛ばすなー順番を待てーはやくウンチしてー髪がぐちゃぐちゃー寒くないのー暑くないのー靴下がちぐはぐーそのスカート短すぎるーシャツにジャムがくっついてるーウンチしたら流してー遅れるよー忘れ物はないのー靴ひもちゃんと結べー車に気をつけろーほらほらーケンカするなー時間ないーきゃあーぎゃあ。。。

 一応これだけでも44のセリフができた。その日によって44以上になることはあっても、44以下になることは滅多にないだろう。30分の間に44のセリフを5回ずつ、365日聞いたら、いくら何でもうちの子たちだって、少なくとも44のセリフが丸暗記できないわけがない。

 よし、がんばろう

 水曜日は音楽に、図書館に、乗馬があって、とても忙しい。

朝から「遅れるよ」「急いで」をさんざん繰り返した私は、夕方になると雑巾のようになってしまっていた。イライラしながら、のろのろする娘を待っていた。「このままだと遅刻する」という時間になってやっと準備できた我が子は、ブーツを履いて、ヘルメットを被ったそのかっこうで、腰に手をあてて、怒ったようにこう言った。

「ママン、急いでよ、遅れるじゃないの」

よくもまあ、言えたものよ。恥を知れ。

 ドカーンと切れた私は、「今出たら遅れるから、もう連れて行かない」と言って靴を脱いだ。

9歳の娘に「連れて行かないと、自殺してやる」とか言われたが、死なせたくないのに死なれてばかりの私に、よくもそんな脅しができたものよと思って、トーゼンいかり狂った。

 こんなにかわいくて、頭が良くて、夢がいっぱいある子が、親に負けたぐらいで自殺することの無駄を、おまえに理解できないとは驚きだ。死んで欲しくない人に先立たれた家族の気持ちの、何がわかるというのだ。そういうことをわかろうという優しさがないとは、私は不幸な母親だ。などなどと言っていたら、ノエミがおとなしくなった。

 脅す人間と脅し方を間違った。とーんでもない子じゃ。根性叩き直してやる。

 娘にまで馬鹿にされてなるか、と思ってやっと見つけた手段が「連れて行かない」とは情けない。いつか自転車に乗って、自分で家出をするのかもしれない。親のこーんな権力がどこまで役に立つんだろう。

 夜になって、ノエミのほうが謝って来た。あまりにも頭に来ていたので、もうガミガミ叱る気もしなくて、ずっと黙り込んでいたので、これはまずいと思ったのだろう。

 この子たちのほうが私よりも素直で、ずいぶん助かっている。

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