2006/05/13

闇討ち

 JPが試験勉強をしているので、お弁当を二つ持ち、子どもたちを連れて剣道に行った。

 お弁当は道霊先生と、後輩のフレデリックにあげるため。道霊先生は道場の物置で暮らしているので、小さな部屋でカン詰などを食べて暮らしている。ネクトーさんの話では、毎週日曜日には、ネクトーさんの家で食事や、庭仕事をしているらしい。
 道霊先生は、ジャングルで自給自足ができるほどの、狩猟の腕を持ち、食べてよいものと、食べたら死んでしまう植物を見分ける技があり、料理の腕前はプロ級だ。この前ドレイ先生お手製の、《タンポポのジャム》を食べた。こんなの作るのはこの人ぐらい。逸品だった。

 この前ネクトーさんにまき寿司を持って行ったら、「フランソワ(ドレイ先生の名前)が来るから、残しておいてやろう」と言っていた。ドレイ先生にお弁当を持って行ったら、「ピエール(ネクトーさんの名前)と食べよう」と言っていた。
 そう言うと思って、しっかり2人分作ってある。

 一度お弁当持参で道場に行ったら、先生が留守だったので、独身のフレデリックに「まき寿司は好き?食べる?」と訊いた。まき寿司を知らなかったので、むりやり食べろと言って持たせた。
そうしたら、あとで好きだったと言ってくれたので、今回もお弁当を作ってあげた。

 今回はまき寿司ではなくて、ゆかりご飯のおにぎりに、きんぴらごぼうと、ホウレンソウのおひたしと、大豆とひじきの佃煮にした。肉も魚もなし。思いつきだったから、あり合わせで我慢してもらおう。ドレイ先生とネクトーさんはダイエットをしているというし。ははは。。。

 数年前、道場にノエミを連れて行ったことがある。ドレイ先生にも、ノエミという名前の孫がいると言われて、何かのご縁を感じた。ゾエを見て「この子はノエミだったね」というので、「いいえ、ノエミはこーんなに大きくなりましたよ。そっちはゾエです」と言ったら、ビッックリしていた。自分の孫のノエミちゃんには、ずいぶん長いこと会っていないのかなーと思って、切なくなった。

 以前は「子供は嫌いだから、剣道も教えない」と言っていたのに、ノエミに「そろそろ、剣道を始めなさいよ」などと言っている。ニコニコして嬉しそう。
 この人も数年で丸くなったんだろうか?

 「そうそう、エマニュエルがみのりの居合刀を返すって言っているよ」
こんどは、私がびっくりした。
 じつは、先日《日本文化センター》の会長さんにお会いしてからというもの、居合道を再開したいという、血が騒ぎはじめていたのだ。今年は剣道も居合道もしないと、ちょっとそっち方面は避けたいと、思っていたものだから、クラブの新人に、私の居合刀を貸してあげたのだ。じつは剣道より居合道の方が好き。

 赤い鞘(さや)で、鶴が羽ばたく形の鍔(つば)は、佐藤先生と奥様が、私のために選んで買ってくださったのだ。中味は模擬刀、全然切れない。ちゃんと長さも佐藤先生が測ってくださったので、身体にフィットしている。
 海外に居て、日本のものといえば通信販売を利用する。いつも身体に合わないものが届いてしまう。だからこの居合刀は、私にとって貴重な特注品だ。お金は自分で払ったけれども、佐藤先生に贈っていただいたと思って大事にしていた。

 でも、いくら大事にしていても、佐藤先生は喜ばない。わかっていたけどスランプ。宝の持ち腐れは勿体ないから、熱心にがんばっているエマニュエルさんに貸したのだ。そして、いざ、「またやりたいなあ」と思った時には、「返してよ」と言いづらくなっていた。
 
 そんな時に、彼女が返してくれるというので、びっくりした。
「どうして?やめたんですか?自分の刀を買ったの?」
「いや、やめてない。まだ買っていない。でも、そろそろ返したいって。」
テレパシーが通じたんだろうか。
闇の中から、刀がひゅっと出て来た感じだ。
 むむーん。修行が足りないので、よけられない。《鯉口》を切られたからには、こっちも《受け流し》のしたくをせねば、《袈裟切り》で、まっぷたつにされてしまうゾオ。

 来週、居合刀を返してもらったら、《切りつけ》と《抜きつけ》と《血ぶり》と《納刀》
(のうとう)を、毎日20回ずつやろう。ああ、宣言してしまった。やらねばなるまい。
 模擬刀なれども、真剣勝負なのだああああ。

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