2006/05/05

コンポスト

 お天気がよい。さわやかな初夏のようだ。去年の誕生日に義父からもらったジャスミンが花盛りで、中庭に出るといい香りを放っている。JPがジャスミンティーにすると言って、毎朝ジャスミンの花を摘む。前に住んでいた人が植えたバラも、壁を這い上ってたくさんの花をつけている。桜島の火山灰で造った花瓶にとてもよく似合う。

 中庭一面にへばりついていた、セメントの床を、去年からちまちまと壊して来た。庭にセメントを張るなんて一体どういう了見だろう。湿気が溜まって、家の壁を上って来るようだ。セメントの床を壊し始めた時に、いろんなアドバイスを受けた。レンタルで大型機械を借りて一気に壊せという人も数人いたが、粉々にすると処分が大変なので、50センチ四方ずつの塊になるようにして捨てた。

 3分の1はがした段階で、義父がセメントを切る機械を貸してくれた。今度はそれでタイルのようにます目に切り、セメントの下を掘りながら、はがして行った。

 この春休みに、いよいよそのます目が《あと6枚》という所に来た。隅の方がグラグラしているので、そこに鉄の棒を突っ込んで、テコの要領で持ち上げたら、私の力だけで一気に6枚分が持ち上がった。丁寧なJPが、危なくない方法、物音や埃を立てない方法で一ヶ月以上掛かかる分量だ。
だから、その部分もあと一ヶ月ぐらいは要する予定だったのに、私がミナを取る要領でやったら、5分で持ち上がった。

 《ミナ》というのは、本当の名前はわからないけれども、花瀬公園辺りの海岸で、大きめの岩をテコの要領で転がすと、ごろごろ出て来る巻き貝だ。私たちはよく家族で《ミナ取り》に行った。東シナ海に向かってしぶきを上げる岩場で水を汲み、海水だけを入れたお鍋にとったばかりのミナを入れて、その場で茹でていただいた。母の塩辛いおにぎりといっしょに。
 花瀬公園という所には、太平洋戦争で、日本のために亡くなった人々の慰霊塔と、機関銃と穴の開いた鉄かぶとがある。一昨年帰った時には、10年前よりも整備されてはいたけれども、昔と同じ姿で、慰霊塔も鉄かぶともそこにあった。父は昔からその慰霊塔の前で頭を下げるのが好きで、よその人が来るとそこに連れて行く。
 私はそこから旅立った日本人たちが、太平洋の島々で本当はどんなことをしていたのか?日本を出てから、フランス人の口から学んだ。そして、インドシナで日本人にひどい目にあった家族の、その子孫と結婚したのだ。

 自分の家族をその海岸に連れて行ったのは、慰霊塔を見せるためではなくて「ここでミナ取りをやったんだよ」と見せたかったからだ。海岸に下りる階段は台風で崩れてしまって、降りることができなかった。私は岩場をピョンピョンと自由に駆け回るのが得意だった。今でも、岩場に行くと飛び跳ねるし、岩をひっくり返して《ミナ》を探してしまう。

 大きな岩を持ち上げるのは得意だ。だから、JPのセメントも一気に持ち上げた。この一年間うだうだやっていたセメントはがしが、あっけなく終了した。

 セメントは市営のゴミ処理場に運んだ。そこでは回収した草木を、コンポストにするために数年前から処理していたのだが、いよいよこの春から、一般に配布できるよいコンポストができたらしい。無料配布だったので私たちももらって来た。自家用車一台につき200リットル、スコップで15杯分もらうことができた。

 JPはミントティーも好きなので、もらったばかりのコンポストを撒いた小さな花壇に、ミントを植えた。シソも植える予定。

 アイスミントティーがおいしい季節がやってくる。

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