2007/07/12

涼しくて読書の秋。。。のようだ。


 
『博士の愛した数式』小川洋子
traduit en francais : La Formule preferee du professeur par Yoko Ogawa et Rose-Marie Makino-Fayolle (Broche 2005)
Une histoire emouvante. Un professeur de math. adorable.

この本を、いつかは読みたいと思っていた。主人公が数学者だというので。

 わたしは数学に嫌われている。
高校で習った《はず》の数式も公式も、すっかり忘れてしまった。
《はず》といったけれど、じつは《習った覚え》などない。
数学の授業に出た覚えも、数学の教科書を持っていた覚えもない。

 高校の1年と3年の担任はたしかに、統計と表作りの大好きな数学教師だった。そのカワナベから、数学を習った覚えはない。でも、牛乳ビンで頭を殴られ、頭が《ルート》のような形になったあと、翌日にはタンコブ化した覚えははっきりと残っているので、たしかに、彼にも嫌われていたんだろう。ってことは、カワナベの授業には一応出たものの、悪い点数を取っていたということだろう。

 カワナベはありとあらゆる統計(欠席率。宿題忘れ率。遅刻率。など)の付録つきというとんでもない成績表を親に送りつけるのが趣味だった。(義務?)それをわたしは、普段は何の共通項もないクラスメート、本当の姿を知らない上級生と下級生にだけはたしかにモテていたクラスの男子《アXタ》氏と見せ合って、「今回ビリに近いのは、どっち?」などと、下等競争をした覚えもたしかにある。

 数字には嫌われている。
ボールに、と同じぐらい嫌われている。
バレーボールでも、卓球でも、テニスでも、バスケットでも、ありとあらゆるボールに、わたしは嫌われていた。

 計算は苦手だけれども、数えることはけっこう好きだ。
車に乗っている時、電柱が風景に流れて行く様を見て、ここからあそこまで辿り着く間に、何本の電柱があったか。あるいは、タイルの上を歩く時に、足の二つの親指が、きちんと三個先のタイルに降りるように歩くとか。。。ショーもない決まりや、リズムや、公式を作るのが好きだった。だれにもわからないロジックを発見あるいは発明するのが大好きだ。とてもロマンチックだと思う。

 この前ラジオを聞いていたら、数学者がまったく同じことを言っていた。この人はいつもなにかを数えているらしかった。道を歩く時には歩道代わりの白線の上を落ちないようにまっすぐ歩く(だから曲がる時は直角に)とか、信号が青から黄色に変わるとき何台の車が走り抜けるか自分一人で賭けをやる、とか、前から来る人で赤い服を来ているのは何人か果てしなく数える、地下に降りる階段は何段か、エレベーターは何秒ごとに階をのぼっていくのか。。。そういうことを考えながら、町を歩くのがとっても楽しいと言っていた。
 わかる、わかる。

 ノエミを見ていると、彼女もまた、わたしのようなオンナだというのが見て取れる。自宅の廊下や台所に張られたタイルの上を考えながら歩く様子を見ていると、なにか彼女だけのロジックによって、踏んでいいタイルと踏んではいけないタイルがあるようだ。トイレットペーパーは、切れ目が4枚分のところでぴりぴりと切る、などもその類?階段の数や色別の自動車台数や、電柱や信号などを数えるのがうるさくて、よく運転中に「静かにしろ」と言われている。記号や暗号が大好きで、音楽をはじめた時にも、音痴だし、リズム感がないからだめだろうと思ったら、楽譜は記号と暗号の宝庫だった。だからすぐに楽譜を読めるようになった。同じ趣味があっても、わたしのように数学には結びつかない可能性は、きっとあるだろうが、今のところ、算数は大好きみたいだ。4でヨットだとか3はだれかの耳になるだとか、数字を利用したおもしろいだまし絵を描いているのを何度も見たことがあるし、地図や家の設計図みたいなものを描きながら、そこにちまちまと「窓の高さは何センチ」とか、「三角屋根の底辺は何センチで角度はいくら」とか、描いた設計士みたいな絵もある。もちろん本当に測って書いたわけでもないし、その数字を利用して模型など作れない。ただ、数字を書いたら頭よさそうに見えるからじゃないか。

 『博士の好きな数式』の解説を書いている数学者の『藤原正彦』さんという方が、とてもおもしろい日本語論を持っている人だと知ったのは、先日、この二冊の本の関わりも知らずに手にした『世にも美しい日本語入門』という本を読んだ時だった。
『日本語入門』と名のつく物は大嫌いで、あまり読みたくない方だけど、つい先日友だちにもらった本の中にこの本があり、そこに藤原さんの名前の横に、《安野光雅》さんの名前があったから、という理由で、この本を読み始めた。安野さんのだまし絵や、外国の風景画が大好きなので。
 安野さんは藤原さんの小学校時代の先生だったらしい。小学校の頃の先生との思い出とともに大きくなった少年だったんだなあ、と思う。そのころ感性が育てられたんだろうか?感性豊かな子だったら、数学も得意になれるんだろうか。

 夏休みに入って、この二冊を一気に読んだ。まだ読み終わってない本が家じゅうの至る所にあるのだが、この二冊はあっという間に読み終わった。

 美しい日本語について、いろんな発見があり、そしてまた、数字の奥深さを感じた感動の二冊だった。江夏豊の背番号が28というとても貴重な完全数(自分以外の約数を足すと28になる。1+2+4+7+14 =28 そして 1+2+3+4+5+6+7=28)であると知ってからは、つい家の中で28を探してしまう。前から8は好きだったけど、誕生日は29だ。惜しいなあ。
 

1 commentaire:

ahirot a dit…

Je l'ai lu aussi et j'ai bien aime. C'est une histoire a la fois mysterieuse et emouvante. 小川洋子さんの不思議な世界、フランス人にはどう受け止められているのか興味深いです。それから藤原正彦さん。昔からエッセイストとしても有名で、ちょうど私が大学生のとき大学で教鞭をとっておられて、文系の私は教えてもらったことないけど、当時、留学体験記「若き数学者のアメリカ」が話題になったので、以来、藤原先生の読み物は愛読しています。科学者の書いたエッセイって、洞察に満ちていて発見の連続だからわくわくします。昨年のベステセラー「国家の品格」読みました? 日本よ、武士道精神で国家としての品位を取り戻せ、とカツを入れる頼もしい本、剣士にはお勧めです。藤原先生の他のエッセイもぜひ読んでみてください(お久しぶりのAkiko au Japonより)