2006/02/12

14ひきのさむいふゆ

 ポリーヌさんが高校卒業試験の点数稼ぎのため、日本語の試験を受けると言っている。
高校卒業試験は「バカロレア」という名前で、フランスではBACと省略形で呼ばれている。

 幼稚園はおむつが取れていて、母親が仕事をしているとか、兄弟がいるなどの理由があり、もちろん空きがあったら、二歳半から入れる。小学校は五年制、中学は四年制。飛び級も落第もあるので、日本みたいに「X歳です」と言ったら「ああ、じゃあX年生だね」とは言えない。中学卒業試験もあるし、校風に合わない子供はさっさとやめさせられる。入った高校を出るのは卒業試験で点数が取れてから。みんな怖がっている。

 中学と高校で、ドイツ語やスペイン語などの「外国語」の授業に「中国語」や「日本語」を取り入れている公立の学校も増えて来た。ポリーヌさんは私と3年(といっても1年に30-40時間)勉強したことになっているが、中学と高校で日本語を290時間ぐらい勉強した生徒たちと同じような試験を受けなければならない。だいたい253字の漢字も知っていることになっているが、ポリーヌさんの場合は筆記試験がないので、テキストの中の漢字を読めれば認めてもらえるらしい。確かに漢字は読むのより書くほうが難しいと思うので、筆記試験がなくてよかった。

 面白そうなテキストを練習して、ちゃんと読んで、テキストについて解説をしたり、意見を言ったり、テキストに関係ある問題や関係ない問題や、試験官のいろんな質問に答えなければならない。

 本人は英語はもう完璧にできるし、スペイン語かなにかもやっている。「バスク語」と「日本語」の試験はほとんど「趣味」で受けるので、けっこう落ちついている。(ように見える)

 私はポリーヌさんの試験のことをかなり心配している。数年前に2点取れるかな?と思って送り出した別な生徒が、12点も取って私は神様と呼ばれたぐらいなので、ポリーヌさんだったら大丈夫だろうと思っているが、試験会場の様子が想像できないので、個人的にとっても不安だ。

 今はありとあらゆる本の中から、面白そうな文章を800字から1000字以内で区切って、読む練習をさせている。読ませる練習問題を探したり、切り貼りしたり、書き直すために、私自身たくさんの文章を読んでいるところだ。

 「何字以内の文章」とか「漢字リスト内で読めるもの」とか、「ポリーヌさんが興味のある分野で、あとで上手にコメントのできる内容」と目標を持ってさがす。今まで開いたことのなかった本を本棚から引っぱりだしている。いつもはタイトルを読んでビビッと来るものを手に取って読むのだが、人に読んで面白がらせるのは、けっこう難しい。しかも語彙数がまだまだ少ない生徒なので、練習の際にこちらがちゃんとフランス語で説明してあげられるかどうか考えたら、小学生の低学年向きでよさそうかな。。。と思ったりしてしまう。

 いわむらかずおさんの『14ひきのさむいふゆ』は800字ぐらいでとても短い絵本なのだが、季節の言葉や、日本の田舎の家族の暮らしが見える、とてもゆかいな絵本だと思って気に入った。
 絵を見ながら平仮名で練習して、ちゃんと気持ちよく読めるようになったら、紙に漢字入りの『文章』として打ってあげた原稿を練習し直して、会場に持たせようと思っている。会場には全部で合計4000字ぐらいになるテキストを用意して持参することになっていて、私は800字ぐらいの文章を五つか六つ持たせようと考えている。

 絵本や、小学校低学年の本、民話を読みながら、大人は子供の本をもっと読んだ方がいいなあ、と思った。季節や自然の色や物音を感じると言うこと。小さな生き物の目の高さになること、地面を這い回って汚れることや、チョウチョが鼻の頭に止まってくれるような『静』が、必要なのではないかなあ、と思った。恐ろしい試験準備の合間に、子供の本に再会できてよかった。

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