2013/01/05

新年会 其の一

「其の一」って題打ったということは、続きを予定しているってことなんでしょ〜か?

ゆうべの初稽古に、ブライアンが来ていた。ブライアンは中学二年生の男の子で、とっても複雑な家庭で苦労をしている次男坊だ。カーモーにはお母さんとその新しい恋人と住んでいたのだけれども、去年は中学で、なんだか悪いことばかりをしていた。。。らしい。 夏休み前の6月。人づたえにブライアンが転校するときいてびっくりしたので、町で本屋さんをやっているお母さんを訪ねて行った。ブライアンは友達に誘われるままに、駐車場の自動車に石を投げたり、夜に家を抜け出して遊び歩いたり(夜遊びするような場所は、カーモーにはない。公園などに集まって騒ぐだけ)、飲んだくれて立ち上がれなくなった日もあり、母親の言うことを何も聴かず、このままでは手に負えないので、新学期からパリのそばのお父さんのところに行かせる。。。とお母さんに教えられた。

 ブライアンは静かで、無口で、いつも居心地悪そうにもぞもぞしている。でも、ちょっと似ているもう一人の中学生アランとともに、道場ではいつもにこやかだし、泣き言を言わないし、どんなに怒ってもついて来るし、稽古には休まず来る。。。だから、わたしは「骨のある少年だ」と、かなり期待していたので、なんの話しもなくいつの間にか消えようとしていた少年の、わたしたちの道場での「位置」みたいなものが、ぽっかり空いてしまうのがもったいなくてしょうがなかった。

 ブライアンに「あっちに行きたいの?剣道やめるの?」と訊いたら、「行きたくない。みのり先生と剣道を続けたい」とはっきり言う。まっすぐわたしの目を見て言った。剣道を始めたころは、わたしの目をまっすぐに見ることなんかできなかった少年が。

 わたしは道場のみんなに「ブライアンを救おう!」というメッセージを送り、もう一度お母さんに会いに行って、悪い友達とウロウロしないように、わたしたちも気をつけるし、勉強の遅れや、コミュニケーションを取れない性格に関して、クラブのみんなで協力するから、どうにか考えて欲しいとお願いした。でも、やっぱり家庭の問題なので、夏休みが明けたら、ブライアンはもういなくなっていた。

 ブライアンから連絡がなかった。メール書いても返事がなかったし、お母さんの本屋さんに行っても、「いつ帰って来るかわからない」と言われるのみ。けっきょく楽しみに待っていたのに、秋休みには帰って来なかった。
 そうしていたら、お正月の初稽古に、フラ〜と、まるで「いつものように」という感じで、わたしがプレゼントした竹刀と木刀を持ち、大きな防具袋を肩に掛けて、道場のドアが開いた。みんな「おお〜、おかえりっ」という雰囲気だったので、本人もちょっとびっくりしていた様子はあったけれども、まるで先週もいっしょに稽古をしたみたいに、「ほら、急いで支度しろ」とか背中を叩かれているので、すぐに時間が戻って来たような感じがあった。お父さんの家の側に道場を見つけて、そこに通っていると言う。そこの先生は、有名な剣道一家の一人で、わたしも名前だけは知っていた。ブライアンによると、その先生は九月にパリで行われた昇段試験に参加していて、わたしを見知っていると、ブライアンに話したそうだ。「その時の昇段審査の結果も、先生から教えてもらいました。先生がみのりさんのことを褒めていました。」と言われた。ほお、それはよかった。

 うれしかった。ブライアンもうれしかったと思う。

 初稽古の日は、よそのお客さんが来ていて、大人同士の話しに花が咲いたので、ブライアンには「明日うちにおいでよ」と誘っていた。あさってにはお父さんが迎えに来るというので、どうかなとは思ったけれども、お母さんは、門限なしでゆっくりしておいでと言って、ブライアンを貸してくれた。

 子どもたちのリクエストにより、カレーライスを作った。ブライアンはおかわりをした。デザート(?)の餅も食べた。いっしょに招待していたシリルが持って来たゲームで、うちの娘達も一緒に夜遅くまで大騒ぎだった。ゲームのことまでは考えていなかったので、無口なJPとブライアンを相手に、いったい間が持つかなあと心配していたけれども、シリルのおかげでなんだかものすごく楽しい新年会になった。

 シルヴァンが「餅を食べるのが夢」と言っていたのに、今日は来れなかったので、次回は「シルヴァンと餅を食べる会」をやらなきゃならない。「新年会 其の二」に期待がかかる。「新年会 其の二」は、たこ焼きパーティーかな〜〜。

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