2011/06/16

夢と現実


 指導者資格試験の最終日参加者たちと。


 6月はあっという間に過ぎて行く。天気はいまだに不安定で、なかなか本物の夏が来ない。
剣道指導者資格試験も無事終わり、正式に剣道を人に教えることが許されるようになった。こんな免許は日本には無いので、日本の先生方に報告するとビックリされる。奈良の上垣先生から『人があなたのところに集まって来るような指導者になってください』とお言葉いただいた。人がたくさん集まってくれたらいいな〜。

 剣道の試験は最初47人の申し込みでスタートし、一年の間に少しずつ減り、結局試験を受けたのは27人だった。そして20人が合格した。とっても難しかった。楽天家のわたしも、さすがに自信がなかった。でも勉強しただけのことは発揮できたので、もし落ちていても悔いは無かったと思う。

 調理師の方も、学校の方では『大丈夫、合格です』といわれたけれども、教育委員会の方での発表がまだ無いので、正式に『合格しました』と報告できない。6月中には結果が公開されるのではないかと思う。


 三年前から、あるひとつの目標に向かって、わたしはわたしなりにがんばっている。

一番なにが好きでなにがやりたいのかと訊かれると、『読んだり書いたりすること』『好きな本を翻訳する仕事』『剣道』と応える。この三つのことを田舎の大自然のなかでのんびり暮らしながらやるのが、大きなあこがれなのだ。そして、大きなあこがれだけでは、生活して行くことはできない。さあ、どうしようかと考えたのが、

 田舎で観光シーズンに民宿をやり、シーズンオフでも訪れてもらえるように、セミナーなどのできる『道場』を作る。そこでは自然の中で育てた野菜をたっぷり使った料理を出し、道場の横に設置する指圧の療養所で、身体をほぐしてもらうようなサービスを行う。民宿には露天風呂みたいなのも作ろうか。。。。日本料理の講習会もできるかもしれない。

 この『夢』に関しては、家人を動員しなければならないので、市場調査をし、経費の計算をし、民宿の設計図を作成し、その他ありとあらゆる書類や写真を揃えて、レポートにしてJPに提出した。それが三年前。そして今年は去年から始めた指圧と料理と剣道指導者資格者の免許を取得した。

 職安が転職を希望している無職者のために資金援助をして、いろんな授業を受けることができるシステムがあるというので、これまでやっていた日本語レッスンを一切やめて、職安に登録し、調理学校の入学試験を受けた。40人以上受けて10人が入学できた。面接の日にいきなり抜き打ちテストがあって、数学が全然できなかったので、あとで事務局の人に『どうして入学させてもらえたんですか』と訊いたら、『あなたの提出した企画が素晴らしく、あなたのやる気があったら、ぜったいに実現できると思ったので、調理師の資格を取ってもらいたかったのだ』と、事務長さんに言われた。調理師の免許を取るのは、ものすごく難しかった。さすがのわたしも、二度と、このような学校には入らないと思う。『わたしもやりたいな〜』という人たちには、『考えた方がいいよ』とアドバイスしている。

 『そのアイディアは素晴らしい』と他人はみんな言うけれど、家人はだれものって来ない。
『あなたが民宿やるんだったら、わたしが加勢に行くよ』と言ったのは、母だけだった。

 とりあえずこの凄まじい一年が終わったら、なにか今までと違う新しい人生が待っていると思っていたものの、実は、この一年でいろんなことに気付いた。人に料理を出すことが、自分はあまり得意でも好きでもないということ。わたしは食べることが好きなのだ。うちに来てくれた人に出す料理は、どんなに手間とお金が掛かっても、喜ばれるものを出したい方だから、そういう人間には《食堂》はできない。節約したり、物理的、金銭的な無駄を省いたりしなければならないので、そんなことをいちいち考えていたら、家族のお誕生日に出すような料理を、毎日出すわけにはいかない。

 指圧も、やってもらうのは好きだけど、それが職業となれば、体力を使う仕事なので、44歳からの転職にはかなりきつい仕事だと思う。

 必死な思いで学校に行き、夜は宿題に追われ、研修中は休む間もなく、テレビの前ではただ眠いだけ。気に入った本など読む暇がない。机に向かうこと、辞書を引くこと、ペンを持つこと、ページをめくること、図書館で過ごすこと、勉強するということ、人に何かを教わるということ、調べるということ、文房具屋に行くということ、机の上にコーヒーカップが載っている風景、パソコンの前で一日中過ごす。。。が、好きなのだ。でも、それは自分の書きたいことを書いたり、好きなフランス語の本を日本語に編み直して行くことを通して好きなのであって、栄養学の数字やレシピの手順を暗記したり、労働条件についての法律を書き写したり、訳のわからない問題集の、答えを書き込んで行ったりすることではないのだと気付いたのだ。なので、はやく終われ、はやく終われと思いながら終わらせた。

 
 四冊目の翻訳の本にできそうな、おもしろい本を見つけたので、週明けからこの本のあらすじと感想文を書き始める。日本に帰った時に、編集さんと話し合う予定。

 子ども達の学校、ノエミの卒業試験が終わって、剣道クラブの修了式が終わったら、わたしはパリに行く。中学と高校の同級生で、東京で働いていた頃にも会ったりしていた朝隈くんが、このほどいよいよパリで個展を開くことになったので。7月に入ったらすぐに日本に帰るので、あまり時間が無い。夜行で行って夜行で帰って来ることになると思う。みんなで応援していたもの。いよいよフランスに来てもらえることになって、本当にうれしい。同級生を代表して、パリでの朝隈氏の写真を撮って来るのだ〜〜。


 幕末のピーちゃんとペーちゃん
 

さあ、あしたはネクトゥーさんの88歳のお誕生日なので、ネクトゥーさんの家で食事をする。

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