2008/06/16

とぷとぷと平和

 ゾエが、ちょっとだけ開けた冷蔵庫のドアの前で、じっとしている。なにをしてるのかと思ったら、
「中が暗い冷蔵庫って、見たことある?」
いたずらっぽい目をして言う。
 冷蔵庫を開けて、暗かったら、それは危ない。

 ゾエと二人で、ほんの少しだけ開けたり閉めたりしながら、電気がついたり消えたりする境目を研究した。
これ以上開けたら、電気がついちゃう。というその加減が難しい。
あまり閉めたら中は覗けない。暗い冷蔵庫の中で、輝かない瓶詰めや光らない魚の目を見てみたいのだから。
「ふふ、おもしろいね」
たしかに、冷蔵庫を考えた人は、すごいなあ。開けるたびにちゃんと明るいというのは便利。

 ゾエはよく家の中で隠れる。この頃の流行は台所のテーブルの下か、ソファーの向こう側か、パソコンの下か、ベッドの下。ベッドの下に隠れると、ベッドの正面に置いたタンスに張り付いている鏡に映るので、丸見えなんだけど。

「パパにコチョコチョをして笑わせよう」
それはいい案だねえ。JPでも笑うかもしれないよ、と思って、ゾエがテーブルの下に隠れている間、わたしは台所のドアの後ろに隠れた。JPは、台所に入ってくるなり、容赦なくわたしをぺしゃんこにした。
そのとき、潰れたわたしが吐いた「げ〜」という音がおかしかったらしい。子供たちが「ちびる〜」と言いながら笑い転げる。

 コチコチョ攻撃に失敗して、反撃に合い、笑いすぎておしっこちびった経験もある。(これはわたしじゃないよ、ノエミ)
JPを笑わせようとは。。。まだまだ修行が足りないのだ。腕の長さも足りないし。
わたしでさえ何度も闇討ちの抜き打ちをやってんのに、すばやい袈裟切りで片付けられる。
 反撃は、床に頭をぶつけて転がる羽目になってしまう、恐怖のJPギリ(フランスではコチョコチョのことをギリギリと言う)JPはびっくりしたり、コチコチョに反応することはめったにない。おっもしろくねーパパである。いつも「あんた、そんなじゃ、娘たちに嫌われるよ」と言ってアドバイスしてるんだが、自然の法則には勝てないようなのである。これでも、いちおー、彼なりに努力はしているのである。

 JPに笑ってもらいたい時には、ボボ・ネタに限る。ボボはいつも笑いを振りまいてくれる。
例えば先日のこと。
 朝のお散歩途中。なにやら、意味不明な音が聞こえた。公園には携帯電話の受信音のような声で鳴く鳥もいるし、一度靴の裏のゴムがキュッキュなった経験もあるので、わたしはとりあえず空を見上げ、靴の裏を見た。ちがう。
 わたしが歩くとその音が聞こえ、止まると数秒遅れてその音も止まる。「着けられてるのか?」推理小説が好きなわたしなので、つい、FBIな気分になって、辺りを見回す。余談だが、林を歩く時にはいつも、死体が転がってないか、気に掛けている。

 歩くと鳴り、止まるとやむ。
しばらく経ってから、「わたしが」歩くと音がするのではなくて、それはどうやら「ボボの」歩調に関係があるような気がしてくる。

 歩く、止まる、歩く、耳を済ます、止まって耳を済ます、ボボを見る、歩く、止まる、ボボを見る、ええ〜、なんだろう??

 続いて、音の分析に移る。
ざくざく。。。じゃない
どぶどぶ。。。でもない。
ちゃぷちゃぷ?とくとく?ぷくぷく?じゃぶじゃぶ?
歩く、とぷとぷ、止まる、とぷっ。。。ええ〜、なんでえ〜?

 ボボのお腹がちゃぷちゃぷいっているのだった。
ミネラルウォーターのボトルに入った850ccぐらいの水が、横にしたボトルの中で、底とキャップを往復しながら、「とぷとぷん」といってる、あれだ、あれ。

 ぎゃははああ〜〜〜

 林に、わたしのバカ笑いが広がる。ああ、JPを連れてくればよかった。きっと笑ってくれたのに。

その日の朝、散歩の直前に、ボボはゆうべの残りのスープをがぶ飲みしていたのだった。

 子供たちだけでなく、JPも大いに笑った。
モーガンと一緒に大量生産した春巻きを、半年ぶりに無農薬農場から届いた大きな葉っぱのパリパリなレタスと、ミントの葉っぱにくるんで食べた、楽しい週末の食卓だった。(大量に作りすぎた、春巻きとサモサと、餃子とワンタンを、4食続けて食べる羽目になったんだけど、、、。そして体重も戻っちゃったんだけど。。。)

 明日はまた、ボボを連れて、走る。晴れるかなあ〜。そろそろ日中15度から脱したい。

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