2008/05/27

デビュー

 小学校高学年のとき、丸くて房のついた華やかなバトンを上手に操っている友人がいて、わたしもバトントワリング部に行ってみた。体育祭のパレードで、先頭を飾るバトントワリングの女の子に、憧れていた少女時代。
 プールの脇にあった木造の校舎の中に、器楽部とバトン部があって、そこに行った日のことを、いまでも覚えている。
まっすぐな棒の両端に白いゴムのついた、一番簡単なバトンを持たされて、ちょっと回してごらんよと言われるのでやってみたが、腕の長さが足りないために、バトンの端が脇の下を通過できず《失格》となった。ショーゲキの挫折を味わった。

 部屋を移って、器楽部に行ってみる。素敵な上級生が、キラキラ輝く楽器を優雅に吹いている。木管楽器のくせに金属でできたフルートなる代物だった。やがて、器楽合奏部でフルートとヴァイオリンの募集があって、どちらも3万円の破格で買えるとのことだった。我が家の家計には相当響く値段だった、と、今ならわかる。
 うちにはすでに身分不相応のかなりよく(家計に)響いているピアノがあった。しかも、遠くからやって来る生徒までいるような、人気の高い先生のところに、月謝5千円を払って通っていたので、家計に鳴り響いていたと思う。

 ピアノのレッスンは大嫌いだった。でも、母はかなり熱心だった。なぜあのように自宅レッスンもせずして、恥ずかしげもなく、毎週熱心に先生の家に通っていたかというと、先生のお宅の「待合室」とも言える居間には『ブラックジャック』と『サザエさん』の漫画が全巻揃っていたからだ。ピアノは5歳から15歳までやって、全然うまくならず、先生から「そろそろ進路を考えないとね。ピアノは向いてないと思うよ」と言われ、ようやく母に諦めてもらえた。

 『ブラックジャック』と『サザエさん』を丸暗記するぐらい読み終えて、『いじわるばあさん』に移ったころ、親にフルートを買わせて、器楽合奏部に入った。その時ナオちゃんはヴァイオリンを選び、ヤスコはチェロを選んだ。ナオちゃんがヴァイオリンのケースを持って登下校する様子を見ながら、「あっちにすれば良かった」と思ったこともあった。母は、「ヴァイオリンのほうがいいのに。。。」と言っていたのに、どうしてもそのときにはフルートのほうがかっこ良く見えたのだ。

 フルートは、だから、小学校の高学年から高校の一年ぐらいまでやった。ニューカレドニアに居た時に母に送らせたら、小包が行方不明となり、そこに入っていたフルートは、一生ものですよと言われて買って、学生の時に大好きだった、コバルトブルーの布カバーの、国文学大全集『万葉集』とともに消えた。下から五番めの穴の裏側に、器楽部の引き戸のレールにぶつけてつけたへこみのあるわたしのフルートは、太平洋のどっかそこらで消えた。

 ノエミは3年前からヴァイオリンを始めた。(*)その年に、わたしはチェロを習った。チェロは抱きしめるような格好で演奏するので、大好きだった。ノエミはずっとヴァイオリンを続けている。ずいぶん上手になった。わたしは9月からフルートを習っている。『フルート』という楽器を買って、手元に置いておきたい。そうしたら、いつでもどこでもフルートが吹ける。今のフルートは音楽学校のレンタルで、夏休みの前に返却する予定。そして、来年は、フランス語の学校に行くつもりなので、音楽学校はやめるつもりだ。

 最初で最後なので、思い切ってコンサートに参加させてもらうことにした。ノエミとデュエットをやらせてもらおうと思って。
でも決心したのが遅く、デュエットは完璧と言えなかった。一週間前に「やっぱり二人別々にソロで」ということになり、まずはソロ・デビューとなった。人前で演奏するのは、高校一年のとき以来だ。文化祭の舞台でフルートを吹いたのだ。(と同級生の誰も覚えてないけど。。。)

 5月19日。音楽学校の先生たちのピアノとヴァイオリンの演奏をバックに、ノエミは完璧な演奏をした。5年前からやってる高校生よりも難しい楽譜を、上手に演奏した。母としては鼻が高かった。そのノエミの直後に、「ノエミのお母さんです。今年初級からスタートしました。みなさんも家族で音楽を楽しみましょう!」と紹介されて、いよいよデビューとなった。
 
 友人『か』に教わったあがらない秘術を実践していたので、あまり緊張しなかったけれども、でも、音は震えていた。JPは、「いつもはもっと上手に吹けるのに」と言った。でもまあ、こんなもんだろうと思う。なにせ、練習が足りないのだから。。。先生が「今年、初級から始めた」と紹介してくれたおかげで(先生は本当は知ってるくせに宣伝のためにこう言ってくれた)、みんなに褒めてもらった。昔何年もやってたことがバレたら、笑われるだろう。

 6月の終わりに、今年最後のコンサートがある。その時には、絶対にデュエットを決めるのだ!できたらいつか自分のためにフルートを買いたい!夏に翻訳の本が出版されたら、ノエミにはヴァイオリンを買ってあげるつもり。ゲラがあがって来たので、本当にもうすぐだ。

(*)ダニエルさんちのフランスいなか便り http://www.geocities.jp/nozomidaniel/kimamanikki.html 
チェロとヴァイオリンとの出会いについては、2005年9月12.14.21日その他に書いています。

3 commentaires:

yooh a dit…

 みのり先生こんにちは。むかしむかし南の島で日本語レッスンを受けていたyoohです。公開の場じゃなんだから,先生のメアドを探したのですが見つからずじまい。。。
よかったら教えてください。お話ししたいことでいっぱいです!
 フルート素敵ですね。のえみちゃんも,生まれたてほやほやの写真しか知らなかったけど,もう10歳なんですね。でも一番驚いたのは,先生が私よりたった11コしか上じゃなかったたこと!
つもる話がいっぱいです。ご連絡お待ちしてまーす。

nozomi a dit…

yoohさん、こんにちは。わたしを見つけてくださって、どうもありがとうございます。
 南の島で日本語を教えていた生徒さんだそうですが、こんなに上手な日本語のメールを頂けるなんて、これは驚きです。ずっと続けていてくださったんですね?南の島には五年半いて、島を後にしてから、18年も経っているんですよ。覚えていてくださってありがとう。誰だろう?
nozomi.daniel@yahoo.co.jp
に、メールを書いてみてください。
たのしみです〜〜。

nozomi a dit…

yoohさん、
すみません、間違えました。
メールはこちらのアドレスでお願いします。
applenozomidaniel@yahoo.co.jp