2008/03/07

2月11日 名古屋から東京へ


 ミーさんが撮影した、雪化粧の富士山

 10時10分 名古屋発の《のぞみ》に乗ったら、11時56分頃には「東京駅」につく。だから名古屋人のすーさんは「東京で暮らさなくても充分仕事ができます。名古屋は大阪と東京の間で、世界の中心だにゃ」と言っている。にゃるほど。
 ミーさんは電車に乗ると眠る。まるで日本人化している。いびきまでかいてる。わたしも疲れてるのに、寝てたら降りれなくなるんじゃないかと心配だから、電車の中ではできるだけ寝ないことにしている。
 「そろそろフジヤマが見えて来るころでは?」
ミーさんがいきなり起き上がる。大雪のあとだから、富士山の雪化粧に期待をかけている。わたしもわくわく。遠く進行方向の前方右側に、富士山が姿を現した。
 「おお〜マニフィック!」
ミーさんいたく感激している。カメラ、カメラ。
 カーブに掛かって、一度見えなくなるも、じきに、左手に姿を現す。
 さっきまでグーグー寝ていた乗客たちが、もそもそと左側に移動を始め、ミーさんのシャッター音を皮切りに、乗客たちのシャッターの嵐となった。かなりプロのカメラっぽい音もある。

 ホームには、《あー》さんが待っていてくれた。懐かしの《あー》さん。夏に私たちを時速9キロで東京中を歩かせた《にっくき「あー」さん》がニコニコ、「目頭が熱い」という雰囲気で目を細めていた。
 ホテルに荷物を置いた。3D防御マスク姿は、スイスから合流した《むー》さん。4人で日比谷公園へ
 
 東京でのお食事場所を決めるのは、《あー》さんのお仕事。いつもとっても入念なプログラムを作り、バランスの取れた食事会が予定される。
 ところが《あー》さん、ホームでの社交辞令のあと、いきなり「生き方を変えました」と宣言したのであった。夏にミーさんと過ごしてから、ちょっと人生観が変わったのだと、前にメールを戴いていたのだが、数ヶ月後の再会で見る《あー》さんは、さすがに顔色もよく、ニコニコ顔も渋いというよりは穏やか、とっても人間的な素敵なおじさまになっていらっしゃる。なんでも、日々のウォーキングを怠らず、仕事の約束には余裕を持ち、慌てず、走らず、ペースを落として効率のよい仕事をすることに決心したという《あー》さん。夏に会ったときには、「この人は過労で先が長くないかも?」と心配していたほどだったが、晴れ晴れとした変身だ。
 
 「で、今日のお食事は、出たとこ勝負で、本日の気分と、レストランでやってるメニューを見て、食べたいものを食べるとしませんか?」とおっしゃる。寒いけれどもお空は快晴。《むー》さんが風邪菌さえ飛ばさなければ、どこまでも着いて行けると思った。名古屋では地下の駅と、その上のデパートと、そのまた上のホテルと。。。ひとつの建物のなかで動いていたので、ちょっと息切れしそう。日比谷公園の林を歩くのは、とっても気持ちよかった。

 が、しかし、予約もなんにも取っていないお昼は、接待にはよろしくない。カレー屋さんの前で椅子に座って順番待ちか?ということになり、わたしはちょっと不安になって来た。《あー》さんも真っ青になっている。《ミー》さんは面白がっている。《むー》さんはマスクの下から、きょろきょろ私たちを観察している。そうこうしていると一度行方不明になった《あー》さんが、カレー屋さんの行列の所に戻って来て、「上に行きましょう」と合図をしている。

 日比谷公園内の本格仏蘭西料理店《松本楼》またの名をBois de Boulogneというレストランだった。《あー》さんは、予約も取っていないレストランで「社長の友だちだ」とかなんとかホラを吹いて、無理矢理4人席をぶんどってしまったのだ。やり手だなあ。
 《ミー》さんは、10年来のお友だちである《あー》さんにラギニョールのナイフをプレゼントした。フランスでは刃物をプレゼントするのは縁が切れるといって忌み嫌うので、それをお祓いする意味で《あー》さんに小銭をくださいとお願いしていた。そうすれば、ミーさんはプレゼントとして送ったのではなく、《あー》さんに買ってもらったことになるから。100年も続く森の中の静かな仏蘭西料理店で、久しぶりにフォークとナイフを使い、ワインを飲んだ《ミー》さんは、とても嬉しそうだった。《あー》さんも、買ったばかりのナイフで、ステーキをザックザックと切っている。一変してワイルドな男。(でも相変わらずワインには弱いと見たよ)

 日本の人たちは、ミーさんが来るというとフランス料理を食べに連れて行かなきゃと張り切って、高級な仏蘭西料理店でのお食事を予定する。そして、高いワインを買いに走る。フランス人調理師のやっている本格仏蘭西料理店というのは、どこも高価なので、招待してくれる方にも申し訳ない。フルコースだとだらだら出るからお昼に2時間ぐらいも掛かってしまう。料亭も同じ。食事の時間を短縮して移動や仕事にもっと余裕を持ちたいと思っているし、いろんなところでいろんなものを食べてみたいと言っている。
 海外で勉強して来た日本人調理師たちは、とても繊細で器用だ。勉強した通りのちゃんとした料理を作ってくれる、というのがミーさんの感想で、日本人調理師たちの西洋料理や、有名でないけどこれから芽を出しそうな調理師たちの新しい料理を食べてみたいと思っている。料亭や寿司屋は大好き。でも、1日3食お箸とビールが続くのは、ちょっとうんざり。その時の体調と気分というのもあるが、料理にうるさい人だからまったく知らない所にさっと入って、いつも満足できるとは限らない。高級なお店じゃなくてもいいけど、ゆっくりできる所がいい。その代わりダラダラはいや。

 いつも苦労している《あー》さんに、あれこれ注文を付けるのは心苦しいけれども、《あー》さんは《ミー》さんの接待に関しては、名古屋の「すー」さんから、「金に糸目をつけるにゃあよ」という支持を戴いているそうなので、どこに連れて行こうかと考えるのが楽しいそうだ。わたしも、とても楽しい思いをさせていただいている。そして、この5日間で記録的な体重増加が約束されている。

 午後は、(省略)テレビの取材もやって来る。テレビインタビューで出された質問がうまく日本語にできなかった。するとミーさんも、マイクに向かってチンプンカンプンな返事をしてて、どーしよーと思ったけど、テキトーなことを言い、ミーさんが質問にちゃんと応えたように言って、テレビ局の人をさっさと追い返した。

 夜に「さっきのみのりさんの質問、全然意味が分からなかったけど、テキトーに応えたよ。あれで良かったの?」とミーさん。
「すごく変な応えでしたけど、ちゃんと上等な日本語でテキトーに応えておきました。」
 プロのちゃんとした通訳さんがテレビを見ていて、名古屋の「すー」社長に「あの人はインチキな通訳ですよ」とチクったら、わたしはクビになるかもしれない。どうせ、インチキな通訳だし。。。ま、いいっか〜。

 夜は新宿の夜景を見ながら、おされな日本りょーり。スノッブな人がいっぱいいた。わたしは鼻水が止まらず、トイレに何度も駆け込んで、鏡で鼻の下が赤いのを見ながら、「早く帰りたいな〜」と思った。レストランで何度もトイレに駆け込むのはフランスでは×なので、あらかじめ《ミー》さんには、「日本では人前で鼻を噛んだらいけないんです」と断っておいた。ミーさんはわたしが席を立つたびに「いってらっしゃ〜い。ごゆっくり〜〜」と送り出してくれた

 おされな日本りょーりのスノッブなお店では、スッポンのお鍋やなにかも出た(実はよく覚えてない。鼻水に集中してたので)。やっとたどり着いた最後のデザートで、団子の気持ち悪いデザートらしきものが出て、「うちでもこういうのをたまに作るよ」と言ったら、《ミー》さんに「お願いだからわたしは呼ばないでくれ」と言われた。

 初めて、東京都庁をこんな間近で見た。スパイダーマンが登りやすそうで、地震が来たらあっという間に壊れそうで、そしてテロの飛行機が突っ込むには便利そうなビルだった。東京人はお金持ってるんだにゃ〜。超近代的摩天楼を見あげながら、超高層ビルの足元独特の、吹き荒れる風を一身に受けて、鼻水まで凍りそうな気分だった。タクシーでホテルに戻る途中、地下鉄工事をしている新宿の街を横切りながら、「まだ地下には場所が残ってるのかなあ〜」と、ミーさんとわたしはいたく感慨に耽った。
 彼も今ごろ、田舎でのんびり過ごす、娘さんとの日だまりを思い浮かべているに違いない。

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