2005/10/28

シクラメン

  11月1日はTOUSSAINトゥッサン「万聖節」で、翌日がfete des morts「万霊節」なので、10月の22日から11月3日まで公立の学校はお休み。大人もそれに合わせて休みを取って、故郷に里帰りする人が多い。お墓参りの週となる。そしてフランスではこのバカンスの週が、年間で一番交通事故の多い休みだ。

 数週間前から、お墓や家のまわりに飾るためのお花が、臨時のスタンドなどで売られるようになった。この季節、お墓に供えるための花といえば、フランスでも菊の花。マーガレットというか、小ぶりのカラフルな菊が、ポンポンみたいに丸く咲くように植えられて、大きな鉢植えで売られている。

 その鉢植えが、行く先々で目についていた。

 実は、花を買うのはあまり好きではない。日に日に枯れて行く姿を見るのも、枯れた花を捨てるのも、大嫌いだ。長持ちのコツ、というものもあるらしいが、手間をかけるということの嫌いな人間は、枯れるのを見るのが嫌いと言いつつ、すぐに枯らしてしまう。

 お盆だから菊というのも、気に触る。日本と同じじゃないの。最初、日本では菊とは呼ばなそうな、オレンジの菊を手に取った。葉を見ながら「これ食べられるかな」などと考える。

 うちには「お坊さま」がいらっしゃる。クスノキで出来た、全長20センチぐらいの木彫りのお坊さまだ。薩摩焼のおチョコに水を入れて、チーズが入って売られていた小さなお皿に、ご飯を炊いたときだけご飯をあげている。お線香は今のことろ毎日香だが、これが終わったら、フランスで買うことの出来る、インドやパキスタンの線香でもよしと思っている。フランスでは今、お香を焚いて心を癒す、ということがはやっていて、お線香を買うことが出来る。

 お坊さまは、知覧町に住む小学四年生のときの恩師、折田先生が自ら彫られた作品。先生は、私の仲人さんで、去年の今ごろ、両親と一緒に先生のお宅を訪ねた時に、家にある作品をなんでも選んで持って行っていい、と言っていただいたので、父と一緒に選んで木彫りでニスの塗っていない、肌触りの温かい、この名もないお坊さまを頂いて来た。
 お坊さまは、しずかに目を閉じて、かすかに笑っていらっしゃる。時々「クスッ」と声が聞こえるようだ。湯気の立つご飯をあげると、子どもたちが「お坊さまが喜んでるー」と言って笑っている。ご飯をあげない日が続くと、ゾエが「お坊さまがご飯を食べたがっている」と言う。

 お坊さまの横には写真その他は一切ない。花も嫌いだが、亡くなった人の写真を置くのも好きじゃない。でも、子どもたちが日本のことを忘れないように、会えなくなった人のことを覚えていられるように、この休みに、写真を整理して家のどこかに飾ろうと思う。

 お坊さまの横には、結局菊ではなくてシクラメンを置いた。つぼみがたくさんついていたので、当分は楽しめそうだ。早くもクリスマスが来たみたい。お坊さまの横にツリーを飾ったらうけるかもしれない。町ではハロウィンのカボチャも見た。

Aucun commentaire: