私の剣道の先生はドレイさんという名前で、垂れに「道霊」なんて書いている。先生は道場の隣の物置に住んでいる。書き間違いではない。自宅の物置を改造して、道場にしたのではなく、道場の物置に住んでいるのだ。
アルビ市の武道館という集合スポーツ施設には、柔道、空手、カンフー、太極拳、銃術、ヨガ、テコンドー、(なぜか)ダンスなどのできる、畳と木の床の道場が全部で四つある。剣道と居合道はダンスの部屋で稽古している。大きな鏡があるから嬉しい。
今年は剣道はやめようかなーと思っていたのだが、夏休みの終わりに先生が「いつ来るの?」と電話をかけてきた。「いつ来ても居るけど、今度の土曜日は稽古をしないよ、釣りに行くから」がははと笑う。
先生は数年前に肺がんを告知されて、抗がん剤を打ったりもしていたが、まだ生きているということは、癌は治ったのかもしれない。きいていない。今年のお正月にお姉さんが、癌で亡くなった時に「家系だから、次は自分の番だな」と言っていた。
道霊先生は父と同い年で、言うことややることが似ている。家族がなくて(離婚とかいろいろ深い事情)道場の脇の物置に、二段ベッドを置いて、その上段に全財産を積んで、一人暮らしをしている姿も、みすぼらしくてちょっと悲しいので、私はときどき日本食を差し入れする。本人はその、「手の届く所に全財産があって、死ぬ時はアトカタもなく何も残さないで済む」という人生に満足しているらしい。
「剣道が一日中できるから便利。通勤時間もゼロだし」なるほど。
剣道バカだと思っていたら、去年から釣りと、狩猟まではじめた。「剣道ばっかりやってるとバカみたいだからさあ。銃を買ったから見においで」と言われて、それが「新しい釣り竿を買ったから見ろ」と自慢する父に似ていたものだから、ついあとについて、全財産で埋もれた、小さな部屋に足を踏み入れた。テレビはもちろんない。小型冷蔵庫に、釣った魚と撃った鳥が入っている。
雑誌や、食料や、剣道着や釣り道具の下から、立派なケースが出て来て、そこから散弾銃を持ち出した。
ちょっと危ない。
お孫さんの写真があって、ノエミちゃんだというので、深い縁を感じた。
キノコをもらった。スーパーでも市場でも売っていないキノコだったので、食べ方も教えてもらった。
いちおう剣道もやった。さし面というのを習った。難しい。
2005/09/13
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