ノエミの犬歯が抜かれる。犬のような歯というよりは、鬼ばばあのような歯だ。しかも外に向かっているのではなくて、歯茎の内側に生えている。もちろんほかの歯と並ばずに、両隣の歯に比べたら45度ぐらい曲がっている。その歯はなくてもいいと歯医者に言われた。矯正器具をつけるのに邪魔らしい。
三週間後には矯正の器具をつけることになっているので、今からその歯を抜く。歯医者は数週間前から予約してあって、普通の歯医者ではなくて病院内の特別治療室で「手術」並のものものしさ。親は「子どもに麻酔をすることを認めます」とサインさせられた。
その医者に予約を入れてから、JPが同僚から「その医者は肉屋だ」と言われた。同僚は娘の治療のためにその医者にかかって、娘は治療の最中に痛みで大暴れし、口を血だらけにして、治療室から泣き叫びながら出て来たと語った。
私は、どうしよう、どうしようと思いながら出掛けた。(カーモーのかかりつけ医の紹介だったから、信じることにして。)
その医者にはこれまでにも、矯正器具の見積もりのために二回ほど会った。子どもにはけっこう優しいし、ギャグなど飛ばして、ノエミを笑わせている。けれども、アシスタントの看護婦さんたちを怒鳴り散らす様子や、《命令》の仕方を見ていて、腕が良くなかったら絶対に挨拶したくないなあ。。。と思うような医者だった。自分と《客》以外はみんな敵!みたいな雰囲気があった。
でも歯医者は、神経質に細かいことを気にするぐらいでないと勤まらないと、じつは思っている。なにしろ細かい作業だから。
昔わたしは(なぜか)歯医者になりたかったのだが、私のようなおおざっぱな人間には、絶対に無理だっただろう。
緊張して、朝も早くから支度し、遅刻だけはしないように余裕を持って出掛けた。あの神経質な医者をイライラさせてはまずかろう。病院での待ち時間を予想して、雑誌や本も大量に持って行った。抜歯してから数時間は食べられないのではないかと思ったので、出掛ける前に「無理してでも食べろ」とノエミに無理を言った。
治療は5分。書類を作って、お金を払って、次回の予約をして。。。病院を出るまでに15分しか掛からなかった。駐車場に来てから、ノエミが「抜いた歯をもらうの忘れた。歯がないとネズミが来てくれない」と言うので、歯をもらうためにUターンした。
抜歯後の歯はすぐにゴミ箱に捨てられたらしい。もうどれがノエミのかわからない。看護婦さんは、病院内で患者の体内から出たものは、すべて消却されることになっていると説明してくれた。
「ノエミはとっても強かったから、ネズミの代わりに、ママンがプレゼントをあげるよ」となぐさめたら、ちょっとは安心したみたいだ。
夜少し痛みはあったものの、熱を出したり、ひどく痛がることはなかったので、ちょっと安心した。
矯正の器具なんか、つけなくてもいいのになあー、かわいそうになあーと思う。
「女の子だから、きれいにしてあげなさい」とみんな言うけれども、今現在は自分の歯並びの美しさなんかどーでもいいと思っているので、そんな子に矯正器具を強制するのは心苦しい。でも、義母などはきれいにしてあげないとあとで恨まれるよ、と言っている。
そんなものだろうかねえ。
健康な子どもに生んであげたんだから、あとは死ぬまで感謝されると思っていたけどねえ。
2006/06/15
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