3月の最後の週
3月はあちこちで春を呼ぶカーニバルが開かれている。
先日はアルビのカーニバルにも行った。移動遊園地が来ていて、子どもたちはジェットコースターも体験した。
余談だがフランスでは『ジェットコースター』のことを『モンタ−ニュ・リュッス』と言う。モンターニュ』というのは『山』のことで、『リュッス』は『ロシア』のこと。『ジェットコースター』は『ロシアの山』というフランス語で、いつも不思議に思う。
3月25日土曜日には、幼稚園でカーニバルが開かれた。子どもたちが変装をして、歌ったり踊ったりした。紙吹雪を投げあって、おやつが食べ放題だった。実に楽しいお祭りだった。
3月の最後の一週間、学校の門のすぐ脇に、キャラバン隊が横づけした。サーカスの『ピコチーユ』一座だ。ピコチーユ一座のリーダーは『ゼ』という名前のお父さんで、この人はNHKの『できるかな?』の『のっぽさん』に似た面白い帽子を被っているピエロだ。
踊りは10歳の『ユミ』、チェロは13歳の『ノエ』、空中ブランコはお姉ちゃんの『チェッツェ』、ヴァイオリンと歌はいちばん上のお姉ちゃんで『シュシュ』、ギターは『チェッツェ』の恋人の『ヨコ』でピエロも演じる。手回しのオルガンは『シュシュ』の恋人のX(名前を忘れた)、そしてお話上手なお母さんのYさん。
家族揃ってテントのないサーカスを運営している。各地の幼稚園などの要望をうけて巡回する。一週間のプログラムで、歌や踊り、ゲーム、ピエロの曲芸、ピエロのお化粧などを教えるのだ。面白い楽器をたくさん持っているので、幼稚園では楽器についても勉強できたし、キャラバン隊の生活を覗かせてもらえた。私も『引率』と称して、積極的に催しに参加して、キャラバン隊にキャンピングカーにも乗せてもらった。
ピコチーユ一座は幼稚園とキャンプを行ったり来たりして、毎日私たちと顔を合わせた。私も『シュシュ』に声を掛けられた。ゾエがヴァイオリンやチェロのことをよく知っているので、びっくりして訊ねたら、お姉ちゃんとお母さんが楽器を持っていると話したそうだ。『シュシュ』がヴァイオリンを習った先生は、またもやノエミの先生だった。お母さんが「あの先生はこの地方でいちばん面白い先生よ」と話していた。
4月31日、いよいよサーカスの本番。昼間は子どもたちが招待されて、小さな音楽会に参加し、一緒に歌ったり踊ったりした。夜は有料で、大人もたくさん集まった。ピコチーユさんたちはみんなお化粧を施して、おもしろおかしい衣装を身に着けていた。音楽のほかにいよいよ空中ブランコも見ることができた。『シュシュ』は真っ赤なドレスに大きなリボンをつけて、へんなお化粧をしていた。甲高い声で、とんちんかんなことを言って、みんなを笑わせながら、時々ヴァイオリンを弾いた。最後には、今までの甲高い声から一転して、素晴らしいアルトでエディット・ピアフをお腹の底から歌った。大人たちの大喝采が巻き起こった。
とても楽しい一週間だった。ピコチーユ一座はまた別な町に行ってしまったが、かわりに春を置いて行ってくれた。
2006/03/29
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