夕べから、もうお金が一銭もない。JPがお小遣いをくれていたのだが、食事・いろんな場所の入場料・メリーゴーランドのエサ代・食事代・ガソリン代・高速道路・コーヒーやトイレ使用料など、財布に穴が開いてるようだ。「ずっと運転するのはみのりさんだから」と、《か》さんが本当にずいぶん加勢をしてくれた。ホテル代も出していただいたし、高速道路でもずっとカードを手渡してくれた。でも家を一歩出ると、お金が出て行くものなんだなあ。家でじっとしていて、ただ寝て暮らし、息をしているだけでも、電気代やら水道代も出て行くのだから、《観光》なんかしようと思ったら、何ヶ月も前からお金を貯めて、予定を立てていなければならなかったのだ。
従兄が実家の母に《餞別》を預かってきてくれた。母が汗水たらして働き、貯めたお金が祝儀袋に入っていた。母は《従兄》にも餞別をあげていて、2人分できっと母の一ヶ月の給料全部ぐらい出したのではないだろうか。
もしものためにと、JPがくれたお小遣いのほかにその《円》を持って来ていた。悩んだ末に、アヴィヨンで少しユーロに換えた。アヴョンはフランスだから、スペインに行った時のように珍しい物はない。ただ、こーんな遠くまで来た以上は見ずには帰れない場所というものはある。世界中から人が集まる街。見どころはいっぱい、博物館もたくさんある。商店街はカーモーとは比較にならない派手さだが、物を買う余裕はない。
たくさん歩いた。法王の宮殿はものすごく広くて、石の階段や、細い廊下が迷路のようだ。日本語の解説テープもあったが、ゾエがそれで遊んでいたので、私は解説は聞かずに、書いてある表示を読んだり、ただ見るだけだったが、タイルや建築が素晴らしく、高い入場料を払っても中に入って本当によかった。
街を一周し《アヴィニョンの橋》に行った。橋の上を渡ることもできた。(有料)
「橋のー上でー踊るよ、おーどるよ。橋のー上でー輪になって踊ろー」という歌詞は、フランス語もまったく同じ。子どもみんな好きな歌だ。でも《ゆ》ちゃんも《か》さんも知らないというのでびっくりした。私は子どものころからこの歌を知っていた。ピアノを習っていた時に《メトードローズ》という本を使っていて、実はそれがフランスの本だったというのを近年知った。その本で習った曲は今でもよく覚えているのだが、実はその中にフランスの童謡がたくさんあったらしい。そーんな昔から、フランスの音楽とは知らずに学んでいたとは奇遇だ。
本物のアヴィニョンの橋というのは、途中で切れている。ぷっつり見事に切れている。上で踊るようなスペースはあまりないし、石畳でコケそうになる、とっても危ない橋だ。
ゾエも「えー、これがアヴィニョンの橋?」と驚いていた。
お昼はサンドイッチで済ませることにして、一気にアルルへ向かうことになった。換金したのでガソリンも入れることができた。本当はアヴィニョンは10時ごろに出て、アルルには午後ちょっと行くだけにしたかったのだが、《か》さんはアルルをとても楽しみにしていた。
アルルに着いた時には、ゾエが寝ていて、《か》さんたちには「わたしも車で昼寝するから遊んでおいで」と言って行かせた。みんなは車の中でサンドイッチを食べたけど、私は昼食もとらずに運転していたので、不機嫌だったせいもある。狭くて蒸し暑い車内でサンドイッチを食べていたら、ゾエが目を覚ました。
ローマ時代から建っている円形競技場車のそばに車を止めていたのだが、そこから機関車の形をした観光バスが出ることになっていて、30分のコースがあるというので、それに飛び乗った。《か》さんに電話して30分後に車の前で待ち合わせた。
アルルの名所を30分、歩くこともなく、子どもは大喜びで見て廻ることができて、本当によかった。アヴィニョンに比べたら寂れていて、建物は改修されておらず小さい町だが、なんといっても、いまだに昔ながらの闘牛が行なわれているような、石づくりの円形競技場をアップで見たのは感動的だった。私とゾエは中に入る時間はなかった。約束だったアイスを食べさせた。
カーモーまで高速道路を使って5時間以上掛かった。トゥールーズ辺りで、《ゆ》ちゃんが喋り始め、カーモーまで約1時間ずっと東京の小学校のことを話してくれたでの居眠りしなかった。
この3日で一応920.81km走ったことになっているが、道に迷ったり、駐車場やガソリンスタンド、スーパーや高速の入り口を探して行ったり来たりしたこともあったので、軽く1000キロは走っていただろう。
従兄たちは《か》さんに最後のお別れを言うために待っていてくれた。義従姉が夕飯を作っていてくれた。甘い卵焼きがおいしかったあああ。
無事到着にてめでたし。
2006/08/11
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